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COLUMN
2026.11.06
コラム

糖尿病の合併症一覧|三大合併症の初期症状・現れる順番・予防と進行後の治療選択肢【専門医解説】

【この記事の結論】

糖尿病の合併症は、細い血管が傷つく三大合併症「しめじ」(し=神経障害・め=目の網膜症・じ=腎症)と、太い血管が詰まる大血管障害「えのき」(え=壊疽・の=脳卒中・き=虚血性心疾患)に大きく分かれます。多くは自覚症状がないまま「し→め→じ」の順に進行し、腎症は日本の透析導入原因の第1位(約4割)です。予防の柱は血糖(HbA1c 7.0%未満が合併症予防の目安)・血圧・脂質の管理と、年1回の眼底検査・尿検査・足のチェック。本記事では各合併症の初期症状と受診の目安、進行してしまった場合の治療選択肢までを専門医が解説します。

糖尿病の合併症は、症状が出る前に見つけて止められるかどうかで、その後の人生が変わります。

糖尿病の合併症一覧|「しめじ」と「えのき」で覚える

糖尿病の合併症は、高血糖が続くことで全身の血管が傷つくために起こります。障害される血管の太さによって、次の2グループに整理すると全体像がつかめます。

グループ覚え方合併症特徴
細小血管障害
(三大合併症)
しめじし=神経障害
め=目(網膜症)
じ=腎症
糖尿病に特有。自覚症状が乏しいまま「し→め→じ」の順に現れやすい
大血管障害えのきえ=壊疽(足)
の=脳卒中
き=虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)
動脈硬化が背景。糖尿病予備群の段階から進行し、命に関わる

※「しめじ」「えのき」は糖尿病診療で広く使われる覚え方です。発症順はあくまで目安で、個人差があります。

三大合併症(しめじ)の初期症状と進行

し:糖尿病神経障害 — 最も早く現れる合併症

三大合併症の中で最も早く、罹病数年のうちから現れ得るのが神経障害です。典型的な初期症状は両足先のしびれ・ビリビリ感・冷え・感覚の鈍さで、左右対称に足から始まるのが特徴です。進行すると痛みに気づけなくなり、小さな傷から足潰瘍・壊疽につながることがあります。また自律神経が障害されると、立ちくらみ・便通異常・発汗異常・ED(勃起障害)など全身の症状が現れます。

め:糖尿病網膜症 — 自覚症状のないまま進む

網膜(目の奥のフィルム)の細い血管が傷つく合併症で、かなり進行するまで自覚症状がほとんどありません。視力が落ちたと感じた時には増殖網膜症まで進んでいることがあり、成人の中途失明の主要な原因の一つです。糖尿病と診断されたら症状がなくても年1回の眼底検査が推奨されます。

じ:糖尿病腎症 — 透析導入原因の第1位

腎臓の細い血管が傷つき、尿にタンパク(初期は微量アルブミン)が漏れ出すところから始まります。自覚症状はほぼなく、むくみや倦怠感が出る頃にはかなり進行しています。糖尿病腎症は日本の新規透析導入の原因第1位(約4割)です(日本透析医学会統計)。早期発見の鍵は年1回以上の尿アルブミン検査とeGFR(クレアチニン)の確認です。

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手足のしびれは糖尿病のサイン?見分け方と受診の目安

糖尿病による神経障害のしびれには、他の原因のしびれと見分けるための特徴があります。次の4点を確認してください。

どこがしびれる?—「両足の先から・左右対称」が特徴

糖尿病神経障害は、体の中心から最も遠い両足の指先・足裏から始まり、左右ほぼ同時に靴下を履く範囲(足首まで)へ広がるのが典型です。進行すると手の指先にも現れます(手袋・靴下型)。片側だけ、腰から太ももにかけて、手だけ、といったしびれは腰椎や手根管など別の原因が疑われます。

初期症状は?—ジンジン・ピリピリ・冷え・感覚の鈍さ

最初は「足の裏に紙が貼りついた感じ」「砂利の上を歩いているよう」「夜にジンジンして眠れない」といった異常感覚が多く、痛みより先に感覚が鈍くなる方もいます。熱さ・痛みに気づきにくくなるため、低温やけどや靴ずれを放置して足潰瘍につながることがあります。

しびれが出るまでどれくらい?—罹病数年から、診断時にすでにある人も

三大合併症の中で最も早く、罹病数年のうちから現れ得ます。2型糖尿病は診断前から高血糖の期間があるため、診断時点ですでに神経障害が始まっている方も珍しくありません。

しびれを和らげるには?—土台は血糖管理、症状には薬とフットケア

進行を止める基本は血糖・血圧・脂質の管理と禁煙です。痛みを伴う場合はプレガバリン・デュロキセチンなどの薬物療法があり、毎日の足の観察・保湿・深爪や素足歩行を避けるフットケアが足潰瘍の予防になります。しびれが左右対称に足先から出ている方、HbA1c が高い状態が続いている方は、放置せず糖尿病内科で神経障害の検査(振動覚・アキレス腱反射など)を受けてください。

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大血管障害(えのき)— 命に関わる合併症

太い血管の動脈硬化による合併症です。え=壊疽(足の血流が途絶え組織が壊死する)、の=脳卒中(脳梗塞・脳出血)、き=虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)。糖尿病の方はそうでない方に比べ心筋梗塞や脳梗塞のリスクが約2〜4倍高いとされ、しかも神経障害のため胸の痛みを感じにくい「無痛性心筋梗塞」が起こり得る点が危険です。大血管障害は糖尿病予備群(境界型)の段階からすでに進行が始まるため、「まだ糖尿病と言われていないから大丈夫」とは言えません。

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見落とされやすい合併症 — ED・歯周病・認知症

三大合併症と大血管障害のほかにも、生活の質に直結する合併症があります。

  • ED(勃起障害): 神経と血管の両方が傷つくため、糖尿病男性のED発症リスクは約3倍。ED治療薬が効きにくいのも糖尿病性EDの特徴です。
  • 歯周病: 高血糖で歯周病が悪化し、歯周病の炎症が血糖コントロールをさらに悪化させる「相互悪化」の関係にあります。
  • 認知症: 福岡県の久山町研究では、糖尿病がある方のアルツハイマー型認知症の発症リスクは約2倍(調整ハザード比2.05)と報告されています。
  • 感染症・骨折: 免疫機能の低下による感染症の重症化、骨質の劣化による骨折リスクの上昇も知られています。
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合併症を防ぐには — 数値目標と年1回のチェックリスト

合併症予防の土台は血糖・血圧・脂質の3点管理です。血糖については、日本糖尿病学会が合併症予防のための目標としてHbA1c 7.0%未満を目安に掲げています(年齢や低血糖リスクにより個別化されます)。加えて禁煙は、細小血管・大血管の両方に対する最も費用対効果の高い対策の一つです。

  • 毎年必ず: 眼底検査(眼科)/尿アルブミン検査・eGFR(腎機能)/足の視診・触診(傷・タコ・感覚)
  • 毎回の受診で: HbA1c・血圧・体重/LDLコレステロール・中性脂肪の確認
  • 日常で: 足を毎日見る習慣・深爪やヤケドに注意・禁煙・歯科の定期受診

すでに合併症が出ている場合の治療選択肢

合併症が現れた後も、各領域に標準治療があります。神経障害の痛みにはプレガバリンやデュロキセチンなどの薬物療法、網膜症にはレーザー治療や抗VEGF療法、腎症にはSGLT2阻害薬などの腎保護治療、大血管障害にはカテーテル治療・外科治療。いずれも「これ以上進ませない」ことが主目的で、主治医(内科・眼科・腎臓内科など)との連携が大前提です。

当院の糖尿病に対する幹細胞治療(再生医療等提供計画 PB5250050)

標準治療と並行して検討できる選択肢として、当院では糖尿病・境界型に対する自己脂肪由来幹細胞(ADSC)治療を、厚生労働省へ届出済みの再生医療等提供計画(計画番号 PB5250050)のもとで行っています。ご自身の脂肪から培養した幹細胞を点滴で投与し、全身の慢性炎症や血管内皮の機能に働きかけることで、血糖コントロールの下支えと合併症の進行抑制を目指す研究段階の治療です。効果には個人差があります。

来院は原則2回(1回目: カウンセリング・血液検査・脂肪採取=初回来院2時間程度、うち脂肪採取は局所麻酔で30分程度/2回目: 約7週間培養した細胞の点滴投与60〜90分+観察)。点滴は1回1億個または2億個で、治療後は約1・3・6か月を目安に経過を確認します。費用は自由診療で、カウンセリング時に治療計画とあわせて個別にお見積もりします(治療を受けられる場合のカウンセリングは無料、相談のみの場合は5,500円税込)。

【主なリスク・副作用】脂肪採取時に腫れ・内出血・感染・採取部の痕が、細胞投与時に注射部位の痛みや一時的な発熱・倦怠感・不眠が起こることがあります。点滴は塞栓のリスクを避けるため1回最大2億個とし、投与中は医師が経過を確認します。効果には個人差があり、効果が得られない場合もあります。未承認の再生医療等製品を用いる自由診療のため、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。

すでにしびれ・尿タンパク・eGFR の低下などを指摘されている方も、まずはご相談ください。初回カウンセリングで適応の見通しをお伝えします。

糖尿病の幹細胞治療|1型・2型対応の再生医療(治療ページ) 詳しく見る

幹細胞治療は合併症の予防に役立つ?—研究でわかっていること

糖尿病に対する幹細胞治療の臨床研究では、血糖値(HbA1c)やインスリン必要量の改善が複数の試験で報告されています。一方、神経障害・腎症・網膜症といった合併症そのものへの効果は、動物実験や小規模な臨床研究で検討が進んでいる段階で、「合併症を予防できる」と言える根拠はまだ確立していません。当院では、血糖の下支えを主目的とし、合併症については「進行を抑える可能性がある研究段階の作用」としてご説明しています。研究データの詳細は次の記事にまとめています。

糖尿病に幹細胞治療は効くのか?最新の研究データで効果と安全性を検証 詳しく見る

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よくある質問(FAQ)

Q1. 糖尿病の合併症は何年くらいで出ますか?

A. 血糖コントロールの状態によって大きく異なります。神経障害は罹病数年から、網膜症・腎症は一般に5〜10年以上の経過で現れることが多いとされます。ただし2型糖尿病では診断時点ですでに合併症が始まっていることも珍しくありません(診断前から高血糖期間があるため)。

Q2. 合併症の初期症状にはどんなものがありますか?

A. 最も気づきやすいのは足先のしびれ・ビリビリ感(神経障害)です。網膜症と腎症は自覚症状がほとんどないまま進むため、症状ではなく年1回の眼底検査と尿検査で見つけるものと考えてください。

Q3. 「しめじ」「えのき」とは何のことですか?

A. 合併症の覚え方です。しめじ=しんけい(神経障害)・め(網膜症)・じんぞう(腎症)の三大合併症、えのき=えそ(壊疽)・のうそっちゅう(脳卒中)・きょけつせいしんしっかん(心筋梗塞など)の大血管障害を指します。

Q4. HbA1cはいくつなら安心ですか?

A. 合併症予防の目安は7.0%未満です(日本糖尿病学会)。ただし高齢の方や低血糖を起こしやすい方では目標を緩めるなど個別化されるため、ご自身の目標値は主治医と確認してください。

Q5. 一度出た合併症は治りますか?

A. 領域によります。ごく早期の神経障害や腎症(微量アルブミン尿期)は血糖・血圧管理で改善し得ますが、進行した合併症は「治す」より「進行を止める」が標準治療の主目的になります。再生医療は傷んだ組織の修復を狙う研究段階のアプローチであり、当院ではカウンセリングで適応を個別に判断しています。

Q6. 何科を受診すればよいですか?

A. まずは糖尿病内科(内科)が司令塔です。そのうえで年1回の眼科(眼底検査)、腎機能低下があれば腎臓内科、足の傷は皮膚科・形成外科と、領域ごとに連携して診てもらうのが標準的です。

Q7. 糖尿病のしびれは足のどこから始まりますか?

A. 両足の指先・足裏から左右対称に始まり、靴下を履く範囲へ広がるのが典型です。片側だけ、腰から脚にかけてのしびれは別の原因が疑われます。

Q8. 幹細胞治療で糖尿病の合併症は予防できますか?

A. 血糖値やインスリン必要量の改善は複数の臨床研究で報告されていますが、合併症の予防効果は研究段階で確立した根拠はありません。標準治療と並行して検討する選択肢として、カウンセリングで適応を個別に判断します。主なリスクは脂肪採取時の腫れ・内出血・感染、投与時の注射部位の痛みや一時的な発熱・倦怠感です。効果には個人差があり、未承認の再生医療等製品を用いる自由診療のため医薬品副作用被害救済制度の対象外です。

まとめ:合併症は「症状が出る前」に動けるかがすべて

糖尿病の合併症は、しめじ(神経・目・腎)とえのき(壊疽・脳・心臓)で全体像を押さえられます。共通する特徴は自覚症状のないまま進行すること。だからこそ、HbA1c 7.0%未満を目安とした血糖・血圧・脂質の管理と、年1回の眼底検査・尿検査・足のチェックが最大の防御になります。

すでにしびれなどの症状がある方、健診で腎機能の低下を指摘された方は、放置せず早めに受診してください。当院でも、標準治療と並行して検討できる選択肢について、カウンセリングでご相談いただけます。

参考文献

  • 日本糖尿病学会 編『糖尿病治療ガイド』(血糖管理目標 HbA1c 7.0%未満)
  • 日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」(新規透析導入の原因疾患第1位=糖尿病性腎症・約4割)
  • Ohara T, et al. Glucose tolerance status and risk of dementia in the community: the Hisayama study. Neurology. 2011;77(12):1126-34. doi:10.1212/WNL.0b013e31822f0435(糖尿病でアルツハイマー病の調整HR 2.05)
  • 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病の合併症」
  • 日本糖尿病学会 編『糖尿病診療ガイドライン』糖尿病性神経障害の章(しびれの分布・診断の参考)

最終更新日:2026.11.07

                           

【監修医師】

若林雄一                                    

若林 雄一

                                   

セルグランクリニック院長/医師/医学博士

                                   

【専門分野】
再生医療 幹細胞治療 抗加齢医療 予防医療 美容エイジングケア 放射線医学 

【所属学会・資格】
米国再生医療専門医認定機構(ABRM)認定専門医/日本抗加齢医学会 専門医/放射線診断専門医/核医学専門医/日本再生医療学会 会員/日本認知症学会 会員                                        

【臨床実績】幹細胞治療 累計3,000件以上(変形性膝関節症・糖尿病・慢性疼痛・美容エイジングケア等)

【略歴】                                        
神戸大学医学部卒業、神戸大学大学院修了(医学博士)。米国国立衛生研究所(NIH)にて研究に従事。近畿大学医学部講師を経てセルグランクリニック 院長就任

【著書・メディア掲載】
著書:『世界一簡単な再生医療の基礎知識』/米国経済誌「ウォール・ストリート・ジャーナル」掲載 /KBS京都テレビ 出演 /国際学術誌に多数の論文を発表 

【監修者としての方針】
本コラムの医学的内容は、再生医療等安全性確保法に基づき厚生労働省へ再生医療等提供計画15件を届出済み(計画番号:PB5240089ほか)の当院院長が監修しています。科学的根拠(エビデンス)と安全性を重視し、正確でわかりやすい情報発信を心がけています。