「動脈硬化と診断されました。改善できるのでしょうか?」
多くの患者様からいただくご質問です。かつては「老化現象の一種で避けられない」と考えられていた動脈硬化ですが、今は違います。適切な生活習慣の改善、医学的なアプローチ、そして最新の再生医療により、血管の機能を回復させることは十分に可能な時代になりました。
本記事では、食事療法からストレッチ、薬物療法、幹細胞治療まで、動脈硬化を改善するすべての方法を、エビデンス(医学的根拠)に基づいて解説します。
動脈硬化は「改善できる」時代へ
✔ このセクションのポイント
動脈硬化は「治らない老化現象」ではありません。初期〜中期であれば、生活習慣改善+医療介入で血管機能の回復が医学的に実証されています。
「診断された動脈硬化は治らない」。そう思い込んでいる方は多いかもしれません。しかし実際には、初期から中期の動脈硬化であれば、生活習慣の改善と適切な医療により、血管機能の有意な回復が期待できます。
動脈硬化とは、加齢や高血圧、高コレステロール、喫煙などの影響で、血管の内膜に脂質が蓄積し、血管が硬くなって狭くなる状態です。この過程は「発症」ではなく「進行度の問題」です。つまり、進行を止めるだけでなく、ある程度の「改善(血管機能の回復)」も医学的に実証されているのです。
動脈硬化が進むとどうなる?放置のリスク
✔ このセクションのポイント
動脈硬化は初期(無症状)→ 中期(プラーク形成)→ 進行期(心筋梗塞・脳卒中)と段階的に悪化します。無治療では年1〜2%の心イベント発生率が報告されています。
動脈硬化を放置すると、どのようなリスクが生じるでしょうか。進行に応じた段階的な危険性を理解することは、改善への第一歩になります。
初期段階:血管内膜の肥厚
血液中のLDLコレステロール(いわゆる「悪玉」)が血管内膜に入り込み、泡沫細胞(ほうまつさいぼう)という異常な細胞に変わります。この段階では自覚症状はほぼありませんが、血管の厚みがエコー検査で測定可能な程度に増してきます。
中期段階:プラークの形成と不安定化
蓄積した脂質が硬化し、「プラーク」という瘤状の塊が形成されます。この時点で血管の直径が20〜30%狭くなると、運動時の胸痛(狭心症症状)が現れることがあります。さらに危険なのは、この段階では「見た目の狭さ」より、プラークの質(不安定性)が心筋梗塞や脳卒中のリスク要因になるということです。
進行段階:血流障害と器官損傷
血管が70%以上狭くなると、安静時にも血流不足による症状が生じます。冠動脈であれば安定狭心症、脳動脈であれば一過性脳虚血発作(TIA)、下肢動脈であれば歩行時の足の痛みが典型的です。
そしてプラークが破裂すると、血栓(血の塊)が形成され、急性心筋梗塞や脳卒中に至ります。放置による死亡リスクは高く、特に冠動脈硬化を有する患者が無治療である場合、年1〜2%の心イベント発生率が報告されています。これが「改善」を目指すべき理由です。

改善のカギは「プラークの安定化」と「血管内皮の修復」
✔ このセクションのポイント
改善の柱は2つ:①LDL低下と炎症制御による「プラークの安定化」、②一酸化窒素(NO)産生を促す「血管内皮の修復」です。
動脈硬化の改善を医学的に定義すると、以下の2つのメカニズムを目指すことです。
1. プラークの安定化(LDLコレステロール低下と炎症制御)
プラークが破裂しにくい状態に変えることが最優先です。LDLコレステロール値を低下させ、プラーク内の脂質量を減らし、マクロファージなどの炎症細胞の活動を抑制することで、血栓形成リスクを大幅に低下させることができます。
2. 血管内皮の修復と機能回復(血管拡張能の改善)
血管の最内層にある内皮細胞は、一酸化窒素(NO)というシグナル物質を放出することで血管を柔軟に保ち、血流を調整しています。動脈硬化により、この内皮機能が低下します。生活習慣改善と医療介入により、内皮細胞の機能を回復させることで、血管のしなやかさを取り戻すことができるのです。
動脈硬化を改善する食事|何を食べるべきか
✔ このセクションのポイント
地中海食(オリーブオイル・青魚・野菜中心)がLDL低下と血管保護に最もエビデンス豊富。トランス脂肪酸・加工肉は厳禁。
食事療法は、動脈硬化改善の「土台」です。医学的エビデンスが最も豊富な分野でもあります。
地中海食が血管を守るエビデンス
「地中海食」は、スペイン・イタリア・ギリシャなど地中海沿岸地域の伝統的な食事パターンです。複数の大規模臨床試験で、血管イベント(心筋梗塞・脳卒中)の発生を大幅に減らすことが実証されています。
地中海食の基本は、オリーブオイル豊富、魚中心、野菜・全粒穀物豊富、赤肉は少ないというもの。これらの食材は、LDLコレステロール値を低下させるだけでなく、血管内皮の炎症を減らし、酸化ストレスを軽減します。特に重要な成分は以下の通りです。
- オリーブオイル中のポリフェノール:酸化ストレスを減らし、血管内皮機能を改善します。毎日大さじ1杯程度の摂取が目安です。
- 青魚のオメガ3脂肪酸(EPAとDHA):血液を流動的にし、炎症を鎮め、血管内皮機能を改善します。週2〜3回の青魚摂取(1回100g程度)が推奨されています。
- 野菜・果物の食物繊維と抗酸化物質:血液中のコレステロール値を低下させ、腸内の有益菌を増やし、全身の炎症を軽減します。1日400g以上の摂取が目標です。
動脈硬化に良い食べ物・避けるべき食べ物
推奨される食べ物:青魚(サバ、イワシ、サケ)、納豆・豆腐などの大豆製品、ナッツ類(アーモンド、クルミ)、玄米・全粒粉パン、ニンニク・玉ねぎ、トマト・ベリー類、緑茶
避けるべき食べ物:トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニング、揚げ菓子)、加工肉(ソーセージ、ベーコン)、白砂糖・高果糖コーンシロップの多い製品、精製穀物(白米、食パン)、過剰な塩分
特に重要なのは、「何を食べるか」だけでなく、「何を避けるか」です。トランス脂肪酸と加工肉は、LDLコレステロールを上昇させ、炎症を著しく増幅させます。
抗酸化食品とオメガ3脂肪酸の役割
動脈硬化の進行には、酸化ストレス(活性酸素による細胞傷害)と炎症が重要な役割を果たしています。これらに対抗する栄養素が、抗酸化物質とオメガ3脂肪酸です。
抗酸化物質の主要なグループ:ビタミンE(ナッツ、植物油)、ビタミンC(柑橘類、ブロッコリー)、ポリフェノール(ぶどう、緑茶、ダークチョコレート)、カロテノイド(ニンジン、ほうれん草)
これらの物質が活性酸素を中和することで、血管内皮の酸化的損傷を防ぎ、内皮機能を保護します。オメガ3脂肪酸(魚油に多い)は、単に「血流を良くする」だけでなく、マクロファージなどの免疫細胞の炎症シグナルを直接抑制し、プラークの安定化に寄与します。
動脈硬化を改善する運動・ストレッチ
✔ このセクションのポイント
有酸素運動(週150分以上)で血管内皮のNO産生が促進。禁煙は1年後に心筋梗塞リスク半減。睡眠時無呼吸の治療も血管保護に有効です。
運動は、動脈硬化改善のもうひとつの柱です。食事療法と組み合わせることで、相乗効果が期待できます。
有酸素運動が血管を若返らせる理由
有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)は、血管内皮から一酸化窒素(NO)の産生を促進し、血管の拡張能を改善します。さらに、運動によりHDLコレステロール(善玉)が増加し、LDLコレステロール(悪玉)が低下します。
推奨される運動量は、中等度の有酸素運動を週150分以上(1回30分×週5日)、またはやや強度の高い運動を週75分以上です。ただし、動脈硬化が進行している方は、運動開始前に医師の評価を受けてください。特に冠動脈硬化が疑われる場合は、運動負荷試験を行った上で安全な運動強度を設定することが重要です。
血管に効くストレッチ法
ストレッチも血管機能の改善に寄与します。特に、ふくらはぎのストレッチやヨガのポーズは、末梢血管の血流を促進し、血管内皮機能を改善する効果が報告されています。
推奨ストレッチ:ふくらはぎのストレッチ(壁に手をついて後ろ足のかかとを床につける、30秒×3セット)、開脚前屈(無理のない範囲で、30秒×3セット)、足首回し(左右各20回)

これらを毎日10〜15分行うことで、血管の柔軟性が徐々に改善していきます。
禁煙の効果はどれほど大きいか
喫煙は、動脈硬化を加速させる最も強力な危険因子のひとつです。タバコの煙に含まれるニコチンと一酸化炭素は、血管内皮を直接損傷し、炎症を慢性的に引き起こします。
禁煙後の血管回復タイムライン:
- 24時間後:血中の一酸化炭素が正常値に戻り、酸素運搬能が改善
- 2〜12週間後:血管収縮が改善し、末梢循環が良くなる
- 1年後:心筋梗塞リスクが喫煙者の約半分に低下
- 5〜15年後:脳卒中リスクが非喫煙者と同等レベルに
「今さら禁煙しても遅い」ということは決してありません。何歳であっても、禁煙開始の価値があります。

睡眠時無呼吸と動脈硬化の意外な関係
睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、寝ている間に何度も呼吸が止まる疾患です。OSAが動脈硬化を悪化させるメカニズムとして、間欠的低酸素(血中酸素が繰り返し低下)による酸化ストレスと血管炎症が知られています。
OSAの治療(CPAP療法など)により、血管内皮機能の改善が複数の研究で報告されています。いびきや日中の強い眠気がある方は、動脈硬化改善の一環として、睡眠時無呼吸の検査もご検討ください。
動脈硬化の薬物療法|最新の治療薬
✔ このセクションのポイント
スタチンはLDLを70 mg/dL以下に下げるとプラーク退縮が確認。PCSK9阻害薬・高用量EPA・抗炎症薬が次世代治療薬として登場しています。
生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合、薬物療法が必要になります。
スタチン系薬剤のプラーク退縮エビデンス
スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)は、コレステロール合成を阻害し、血中LDL値を大幅に低下させる薬です。複数の大規模試験で、スタチンの服用により既存プラークの縮小が観察されています。LDL値を70 mg/dL以下に低下させると、プラークの進行停止のみならず退縮(縮小)が見られたという報告もあります。
注目の新薬:PCSK9阻害薬・高用量EPA・抗炎症薬
スタチンだけでは十分な改善が得られない患者のために、新しい薬剤が開発されています。
- PCSK9阻害薬:LDLコレステロール低下をさらに強化する注射薬です。スタチンとの併用で、LDLを50 mg/dL以下に低下させ、より積極的なプラーク安定化を実現します。
- 高用量EPA製剤:オメガ3脂肪酸(特にエイコサペンタエン酸)を高用量で投与する薬剤です。中性脂肪の低下に加え、血管壁の炎症を鎮めます。スタチンとの併用で相乗効果が期待できます。
- 新規抗炎症薬:高感度CRPが高い患者に対して、炎症を直接標的とする治療薬の開発が進んでいます。動脈硬化が「炎症性疾患」であるという認識の広がりにより、新たなアプローチとして注目されています。
動脈硬化の「最悪のシナリオ」を防ぐ|最新の幹細胞治療
✔ このセクションのポイント
幹細胞は「血管を修理する」手段として注目されています。また、動脈硬化の最も深刻な帰結である心筋梗塞や脳梗塞、下肢動脈閉塞においても治療効果が期待されているのも特徴です。
動脈硬化で本当に怖いのは、動脈硬化そのものではなく、その先に待つ心筋梗塞・脳卒中・下肢切断などです。動脈硬化が進行した血管では、プラークの破裂による血栓形成が突然死や重度の後遺症を引き起こします。生活習慣改善と薬物療法に加え、「血管を修理する」手段として注目されているのが、幹細胞治療です。
幹細胞はどのように血管を守るのか? ── 3つのメカニズム
まず、幹細胞治療はLDLコレステロールを直接低下させたりする治療ではありません。ではどういう治療なのか?
幹細胞治療のメカニズムは、幹細胞が分泌する数百種類の生理活性物質(パラクライン効果)が中心となって血管の炎症を抑えたり、プラークのできる原因の血管内皮を修復したり、新しい血管を作るといった血管の修理がメインになります。
- 炎症の鎮静化:IL-10やTGF-βなどの抗炎症サイトカインを放出し、プラーク内部の慢性炎症を抑制します。また、マクロファージをM1型(炎症促進)からM2型(修復促進)へ切り替える「免疫調整」作用も報告されています。
- 血管内皮の修復:幹細胞が放出するエクソソーム(細胞外小胞)が、SODやカタラーゼなどの抗酸化酵素を運搬し、酸化ストレスによる血管内皮の傷害を軽減します。これにより、血管のしなやかさが回復する可能性があります。
- 血管新生の促進:VEGF(血管内皮増殖因子)やHGF(肝細胞増殖因子)を分泌し、新しい側副血管を形成して血流不足を補います。閉塞した血管の「バイパス」を体内で自然に作り出すイメージです。
また、動脈硬化の最も深刻な帰結である心筋梗塞や脳梗塞、下肢動脈閉塞においても治療効果が期待されているのも特徴です。

心筋梗塞後の心機能回復 ── 79のRCT、7,103名のメタアナリシス
動脈硬化の最も深刻な帰結のひとつが心筋梗塞です。心筋梗塞では冠動脈が閉塞し、心筋が壊死します。壊死した心筋は元に戻りませんが、残った心筋の機能を最大限に回復させることが、その後の生活の質と生存率を左右します。
2024年にStem Cell Research & Therapyに発表された、過去最大規模のメタアナリシスでは、急性心筋梗塞患者を対象とした79件のランダム化比較試験(RCT)、計7,103名のデータを統合分析しました。その結果、幹細胞治療を受けた患者群では、心臓のポンプ機能を示す左室駆出率(LVEF)が6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、さらに36ヶ月後まで有意に改善していました。つまり、「一時的な効果」ではなく、3年後まで心機能の改善が持続していたのです。さらに、心血管死・再梗塞・脳卒中を含む主要心血管イベント(MACE)の発生も低下傾向が確認されています。
慢性心不全の死亡率22%低下 ── 17のRCT、1,684名
動脈硬化が長期間進行すると、心臓は慢性的なダメージを受け、慢性心不全に至ることがあります。2024年にJournal of Translational Medicineに発表されたメタアナリシスでは、慢性心不全患者を対象とした17件のRCT(対象者計1,684名)を統合分析しました。間葉系幹細胞投与群は対照群と比較して、全死亡リスク比(RR)が0.78。これは、幹細胞治療を受けた患者の死亡リスクが22%低かったことを意味します。
重症下肢虚血 ── 幹細胞群100%四肢温存 vs プラセボ群60%切断
動脈硬化は心臓や脳だけでなく、下肢の動脈にも起こります。進行すると重症下肢虚血(CLI: Critical Limb Ischemia)となり、安静時にも痛みが続き、潰瘍や壊疽が生じ、最終的に切断を余儀なくされるケースがあります。
2023年にStem Cell Research & Therapyに発表されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、糖尿病を合併した重症下肢虚血患者24名を、骨髄単核球投与群(7名)、臍帯ワルトンゼリー由来MSC投与群(7名)、プラセボ群(10名)に無作為に割り付けました。12ヶ月の追跡の結果、幹細胞投与群では全員(100%)が四肢を温存できた一方、プラセボ群では60%が切断に至りました。幹細胞投与群では、痛みの軽減、歩行距離の延伸、創傷の治癒促進も確認されています。
この結果は、動脈硬化の末端症状である下肢虚血に対して、幹細胞治療が「切断を防ぐ」レベルの効果を持つ可能性を示しており、患者様にとって非常に大きな意味を持ちます。
当院の脂肪由来幹細胞治療「グランド幹細胞」の特徴
セルグランクリニックでは、患者様ご自身の腹部脂肪から採取した脂肪由来幹細胞を使用する治療を提供しています。当院では「グランド幹細胞」という安全性と品質を追求した特別に培養した幹細胞を使って治療しています。
当院治療の特徴:
- 自己由来(autologous)の利点:患者様ご自身の細胞を使用するため、拒絶反応や免疫抑制剤の必要がありません。アレルギーリスクも極めて低く、安全性の高い治療法です。
- 脂肪由来幹細胞の優位性:脂肪由来幹細胞は、骨髄幹細胞と比較して、局所麻酔のみで採取できる低侵襲さ、増殖能の高さ、パラクライン効果の強さなどの利点があります。入院は不要です。
- ISCT基準準拠の培養・品質管理:当院では、厚生労働省に認可を得た培養施設で、受注培養(患者様ごとに個別培養)を実施しています。国際細胞治療学会(ISCT)基準に準拠した培養方法で、生存率95%以上、第3継代以内で2億個の品質基準を満たした細胞のみを使用します。1度に作り置きしての長期間の冷凍保存は行いません。
- 点滴投与による全身アプローチ:当院では、末梢静脈からの点滴投与(約1時間~90分)を採用しています。投与された幹細胞は全身の血流に乗って循環し、損傷した血管内皮に集積して修復を促します。外来で受けられる治療であり、入院は不要です。

幹細胞治療の適応が検討される患者様:
- 生活習慣改善・薬物療法の効果が限定的な患者
- 複数血管疾患を有する患者
- 心機能や血管内皮機能の客観的な低下がある患者
治療の流れ:
- 初回診察(血液検査・画像検査で適応判定)
- 脂肪採取と幹細胞抽出(日帰り手術、30分程度の局所麻酔下での処置)
- 幹細胞の培養・増幅(約7週間)
- 幹細胞点滴投与(外来にて約1時間~90分)
- 定期検査と経過観察(1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月)

治療後、多くの患者様から以下のような改善報告を受けています。
- 運動時の胸痛が軽減された
- 歩行距離が延びた
- 疲労感が改善された
- 血管機能を示す検査値が改善した
ただし、個人差が大きいため、治療開始前に「現実的な改善目標」を医師と相談して決めることが重要です。
幹細胞治療について詳しく知りたい方へ
セルグランクリニックの幹細胞治療について、詳しくお知りになりたい方は、以下からお気軽にお問い合わせください。LINE・お電話でのお問い合わせは無料です。
動脈硬化の改善度をチェックする方法
✔ このセクションのポイント
改善度はLDL/HDL比・高感度CRP(血液)、頸動脈エコーIMT・ABI・PWV(画像)で客観評価。血液検査は3ヶ月ごと、画像検査は6ヶ月〜1年ごとが目安です。
治療を開始した場合、その効果を客観的に測定することが重要です。以下の検査方法により、改善度を定量的に評価できます。
血液検査(LDL/HDL比・高感度CRP)
LDLコレステロール値(治療の基本目標):一般的な患者は100 mg/dL未満、冠動脈疾患既往者は70 mg/dL未満、極めてハイリスクな場合は55 mg/dL未満が目標です。
HDLコレステロール値(血管を守る「善玉」):推奨値は男性40 mg/dL以上、女性50 mg/dL以上です。
LDL/HDL比(最新のリスク指標):比率2.0未満が理想的です。
高感度CRP(high-sensitivity CRP)(炎症マーカー):正常値は1.0 mg/L未満。1.0〜3.0 mg/Lは軽度の慢性炎症、3.0 mg/L超は高リスクです。
画像検査(頸動脈エコー・ABI・PWV)
頸動脈エコー(超音波検査)は最も実用的な検査です。頸動脈の内膜中膜厚(IMT)を測定し、正常値は1.0 mm未満、1.0〜1.5 mmは軽度肥厚、1.5 mm超は動脈硬化の確定診断となります。
足関節上腕血圧指数(ABI)は下肢動脈硬化の評価に用います。正常値は0.9〜1.1で、0.9未満は下肢動脈硬化の強い可能性を示します。
脈波伝播速度(PWV)は血管硬度の指標です。PWVの低下は血管がしなやかになったことを示します。
定期検査のすすめ
血液検査は3ヶ月ごと、画像検査は6ヶ月〜1年ごとの定期受診をお勧めします。
動脈硬化の改善に関するよくある質問(FAQ)
多くの患者様からいただくご質問に、医学的根拠に基づいてお答えします。
Q1:動脈硬化は完全に元に戻りますか?
完全に「元に戻す」ことは、医学的には難しいというのが正直な答えです。しかし、「改善」は十分に可能です。具体的には、プラークの成長を止める、既存プラークを小さくする、プラークを安定化させる(破裂リスク低下)、血管内皮機能を回復させる、血流を改善させる——これらはいずれも「実質的な臨床的改善」であり、患者様の生命予後を大幅に向上させるのです。
Q2:改善にはどのくらいの期間がかかりますか?
改善の時間経過は段階的です。
- 短期(1〜3ヶ月):血液検査値(コレステロール、炎症マーカー)の改善が見られます。
- 中期(3〜6ヶ月):画像検査でプラークの縮小やIMT低下が観察可能になることがあります。
- 長期(6ヶ月〜2年):血管内皮機能の本格的な回復が期待できます。
個人差が非常に大きいため、「最低3ヶ月は継続治療が必要」とお考えください。
Q3:サプリメントで動脈硬化は改善しますか?
サプリメント単独での改善は、軽度の患者に限定的な効果があるに過ぎません。ただし、補助的な役割としては、以下に根拠があります。
- オメガ3サプリメント(EPA・DHA):中性脂肪低下、抗炎症作用。
- クルクミン(ウコンの成分):抗酸化・抗炎症作用
- CoQ10:ミトコンドリア機能改善、抗酸化作用
- ナットウキナーゼ(納豆由来):血流改善作用の報告あり
薬物療法や生活習慣改善と組み合わせてこそ意味があります。サプリだけでは治りません。
Q4:幹細胞治療は動脈硬化にどの程度効果がありますか?
正直にお伝えすると、幹細胞がプラークを直接縮小させるというヒト臨床データはまだ確立されていません。プラーク縮小にはスタチン等の薬物療法が第一選択です。一方、動脈硬化が引き起こす深刻な疾患に対しては、臨床データが蓄積されています。
- 心筋梗塞後の心機能回復:79件のRCT(7,103名)で36ヶ月後まで有意に改善
- 慢性心不全の死亡率低下:17件のRCT(1,684名)で死亡リスク22%低下(RR 0.78)
- 重症下肢虚血の切断回避:RCTで幹細胞投与群は100%四肢温存、プラセボ群は60%が切断
幹細胞治療は、薬物療法との併用により、動脈硬化の「最悪のシナリオ」を防ぐ追加的な選択肢として位置づけられます。
Q5:動脈硬化の改善は何歳から始めるべきですか?
医学的には、「遅すぎることはない」というのが答えです。
- 40代〜50代:予防的な生活習慣改善・検査開始が理想的
- 60代〜70代:積極的な検査と治療開始をお勧めします
- 80代以上:改善による恩恵は十分にあります
特に、冠動脈疾患や脳卒中の既往がある患者様は、年齢を問わず、積極的な治療開始が推奨されます。
まとめ|動脈硬化の改善は「生活習慣+医療」の両輪で
✔ このセクションのポイント
動脈硬化改善はまずは生活習慣改善。その後、薬物療法や幹細胞治療の「段階的・積み重ね型」が正解。何歳からでも遅くはありません。
動脈硬化は、「進行性の不可逆的疾患」ではありません。適切な治療により、確実に改善・寛解が期待できる時代になりました。
生活習慣改善(食事・運動・禁煙・睡眠)
これが、すべての治療の基盤です。
薬物療法(スタチン・新規薬剤)
生活習慣改善のみで改善が不十分な場合、医師の指導の下、適切な薬剤を開始します。
先進医療(幹細胞治療)
従来療法で改善が限定的な患者などに対して、幹細胞治療の適用を検討します。
セルグランクリニックが選ばれる理由
- 個別診察体制:患者様の年齢、疾患進行度、生活背景、経済状況などを総合的に考慮し、最適な治療パスを提案します。
- エビデンスに基づく医療:最新の臨床研究データを参考に、治療効果の高い方法を選別します。
- 脂肪由来幹細胞治療の実績:自己由来幹細胞治療「グランド幹細胞」により、受注培養・ISCT基準準拠の品質で新たな選択肢を提供しています。
- 定期検査・長期フォローアップ:定期的な血液検査と画像検査により、改善を客観的に測定します。
- 大阪・心斎橋の利便性:交通アクセスに優れた立地で、定期検査を継続しやすい環境です。
動脈硬化の改善についてご相談ください
動脈硬化の改善についてご相談されたい方は、セルグランクリニックへお気軽にお問い合わせください。LINE・お電話でのお問い合わせは無料です。医師が患者様の現状を詳しくお聞きした上で、最適な治療方針をご提案します。
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最終更新日:2026.04.04