幹細胞培養上清液とは、幹細胞を培養したあとに残る「上澄み液」で、成長因子・サイトカイン・エクソソームなど幹細胞が分泌した成分を含む一方、細胞そのものは含みません。つまり「生きた細胞を入れる幹細胞治療」とも「角質層に働く化粧品」とも別物の、第三のカテゴリです。本記事では、成分としくみ、よく混同されるエクソソーム・幹細胞コスメ・「即日できる幹細胞美容」との違い、美容効果の実際、デメリットと選び方までを医師が整理します。
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幹細胞培養上清液とは?含まれる成分をわかりやすく解説
幹細胞培養上清液とは、幹細胞を培養した培地から細胞を取り除いた上澄み液のことです。細胞は含まれず、幹細胞が分泌した成長因子・サイトカイン・エクソソームなどの生理活性成分を含みます。
幹細胞培養上清液(かんさいぼうばいようじょうせいえき)は、脂肪・臍帯・骨髄・歯髄などに存在する間葉系幹細胞を培養したあと、細胞を取り除いて得られる液体です。読み方が難しく感じられますが、要は「幹細胞が働いた後に残る、成分だけの上澄み」と考えるとわかりやすいでしょう。
この上澄みには、細胞どうしの連絡役として働く分子が多く含まれます。間葉系幹細胞の分泌物(secretome)は、成長因子やサイトカインといった可溶性のタンパク質と、エクソソームなどの細胞外小胞(細胞が放出する小さな袋)からなると総説で整理されています(published in Stem Cells International)。さらに、脂肪由来幹細胞の上清を調べた研究では、測定した200種類の因子のうち104種類が検出され、平均約190ナノメートルの細胞外小胞が含まれていたと報告されています(Stem Cells International)。
ここで押さえたいのは、エクソソームは「上清液そのもの」ではなく、上清液に含まれる成分の一つだということです。この関係は誤解されやすいので、次章で整理します。また、こうした組成は製品や由来組織によってばらつく点にも注意が必要です。

エクソソームと幹細胞培養上清液は同じ?違いと関係を整理
厳密には同じではありません。エクソソームは幹細胞培養上清液に含まれる成分の一部(細胞外小胞)です。ただし美容の現場では、上清液を使った治療を「エクソソーム」とほぼ同義で呼ぶことも多く、言葉の使われ方に幅があります。
「エクソソームと幹細胞の違いは?」という検索はとても多く、混乱のもとになっています。順番で考えると分かりやすいです。まず幹細胞があり、それを培養してできるのが上清液。その上清液の中に、成長因子・サイトカイン・エクソソームといった成分が入っています。つまりエクソソームは、上清液に含まれる成分の一つにすぎません。「幹細胞そのもの」でも「上清液そのもの」でもない、という関係です。
ところが実際の美容の現場では、「上清液を使った点滴・施術」を宣伝上「エクソソーム」と呼ぶケースが少なくありません。これは間違いというより、通り名として広まった呼び方です。そのため、同じ「エクソソーム」という言葉が、精製された細胞外小胞そのものを指す場合と、エクソソームを含む上清液全体をざっくり指す場合の、二通りで使われています。
したがって、施術を選ぶときは名前だけで判断せず、「精製エクソソームなのか、上清液なのか」「由来と濃度は何か」を確認することが大切です。エクソソーム点滴やその料金など、治療そのものの詳細はエクソソーム・上清液の治療ページで解説しています。

幹細胞培養上清液・幹細胞治療・化粧品は何が違う?
幹細胞治療は「生きた細胞」を、上清液は「細胞を含まない分泌成分」を、化粧品は「肌表面へのうるおい成分」を使う点で異なります。とくに「幹細胞コスメ」は上清液などを配合した化粧品で、生きた幹細胞は入っていません。
「幹細胞」と名のつく美容は、大きく3つに分かれます。混同されやすいのですが、下の表のように細胞の有無・法的分類・届く層が違います。まずは全体像をつかんでください。
| 項目 | 幹細胞培養上清液(無細胞) | 幹細胞治療(生きた細胞) | 幹細胞コスメ・美容液(化粧品) |
|---|---|---|---|
| 細胞 | 含まない(分泌成分のみ) | 含む(自家の脂肪由来幹細胞 など) | 含まない(上清液などを配合) |
| 分類 | 医療(自由診療の再生医療関連) | 医療(第二種再生医療) | 化粧品・医薬部外品 |
| 主な作用 | パラクライン(成長因子・エクソソームによる周囲細胞の活性化) | 細胞の生着・組織への働きかけ+パラクライン | 角質層のうるおい・整肌 |
| 使い方 | 点滴・局所注入・マイクロニードル導入 | 注射・点滴(採取→約7週間培養) | 肌に塗布 |
| 届く層の目安 | 注入・導入で真皮に届きうる | 標的とする組織 | 主に角質層(塗布では真皮に届きにくい) |
分類は一般的な枠組みに基づく整理です。「幹細胞コスメ」は名前に反して、多くの場合、生きた幹細胞ではなく培養上清やそのエキスを配合した化粧品です。
表のとおり、最大の違いは「生きた細胞が入っているかどうか」です。幹細胞治療だけが生きた細胞を使い、上清液と化粧品はいずれも細胞を含みません。とくに誤解が多いのが「幹細胞コスメ」で、これは名前に「幹細胞」とついていても、中身は上清液などを配合した化粧品であり、生きた幹細胞は入っていません。この前提を押さえると、次章の「即日できる幹細胞美容」という言葉の落とし穴が見えてきます。
注意|「即日できる幹細胞美容治療」は幹細胞治療ではありません
その日のうちに受けられる「幹細胞美容」は、多くが上清液を使った治療で、生きた幹細胞そのものではありません。自分の生きた幹細胞を使う治療には、採取後約7週間の培養が必要だからです。
「即日」「当日」「今日から幹細胞で若返り」といった案内を見かけたら、一度立ち止まってください。生きた幹細胞を使う治療は、まず自分の脂肪などから細胞を採取し、専用の施設で数週間かけて培養してから体内に戻します。セルグランクリニックの脂肪由来幹細胞治療でも、採取から投与まで約7週間を要します。したがって、採取もなく「即日」提供できる「幹細胞美容」は、その多くが生きた細胞ではなく上清液(あるいはエクソソームと呼ばれる製剤)を使ったものと考えられます。
これは必ずしも悪いことではありません。上清液の施術には手軽さという価値があります。問題は、上清液の治療が「幹細胞治療」という言葉で説明され、生きた細胞を入れていると誤解されることです。両者は中身も期待できることも異なるため、言葉の混同は選択を誤らせます。
そこで、施術前に次の3点を確認してください。第一に、使うのは「生きた幹細胞」か「上清液(無細胞)」か。第二に、生きた幹細胞なら採取と培養の工程・期間があるか。第三に、上清液なら由来と品質管理はどうか。名前ではなく中身で選ぶことが、後悔しないための最も確実な方法です。

なぜ効くとされるのか|成長因子・エクソソームのパラクライン作用
上清液は、含まれる成長因子やエクソソームが周囲の細胞に働きかける「パラクライン作用」で効果を期待されます。細胞そのものを増やすのではなく、既存の線維芽細胞などを刺激するのが考え方です。
パラクライン作用とは、細胞が放出した物質が「近くの細胞」に働きかけるしくみのことです。幹細胞治療のように細胞を移植して定着させるのではなく、上清液は分泌成分だけで周囲の細胞にシグナルを送ります。実際、間葉系幹細胞のレビューでも、こうした無細胞の分泌物は移植細胞と異なり、免疫原性が低く遺伝毒性の懸念が少ないといった利点が指摘されています(Molecular Neurobiology)。
肌でいえば、コラーゲンやエラスチンをつくる主役は線維芽細胞(せんいがさいぼう)です。上清液に含まれる成長因子は、この線維芽細胞を刺激すると考えられています。ただし、ここで重要なのは「メカニズムとして妥当であること」と「実際に肌が良くなること」は別だという点です。作用のしくみが説明できても、臨床効果が保証されるわけではありません。次章で、ヒトでの実際の結果を見ていきます。
美容・肌への効果はどこまで分かっている?(エビデンス)
レーザーやマイクロニードルと併用した小規模試験では、しわ・色素沈着・毛穴の改善が報告されています。ただし多くは補助的な使い方での結果で、上清液単独・長期の効果を示す大規模データはまだ限られます。
美容領域のヒト研究は少しずつ増えています。5件のランダム化比較試験(RCT)をまとめたメタアナリシスでは、幹細胞の培養上清(conditioned medium)を、レーザー・ピーリング・マイクロニードルなどの施術に併用したところ、しわ(P=0.0006)、色素沈着(P=0.004)、毛穴(P=0.01)、肌全体(P<0.0001)で統計的に有意な改善がみられました(published in Aesthetic Plastic Surgery)。P値は「偶然では説明しにくい差がある」ことを示す指標で、数値が小さいほど偶然の可能性が低い、という意味です。
脂肪由来幹細胞に絞った試験もあります。30人を対象に、顔の左右で比べた二重盲検RCTでは、脂肪由来幹細胞の培養上清をマイクロニードルで導入した側で、メラニン・明るさ・きめ・弾力・しわが有意に改善し、有害事象は認められませんでした(Journal of Cosmetic and Laser Therapy)。
| 研究 | デザイン | 人数 | 主な結果 | 確実性 |
|---|---|---|---|---|
| Lin 2022 Aesthetic Plast Surg | メタアナリシス(5 RCT) | 5試験 | 施術併用でしわ・色素・毛穴・全体が有意改善(P<0.05) | 中(Level III・併用・混合細胞種) |
| Wang 2018 J Cosmet Laser Ther | 二重盲検RCT(左右比較) | 30人 | 脂肪由来幹細胞の上清+マイクロニードルでしわ・弾力・きめ改善(p<0.05)、有害事象なし | 中〜低(単施設・n=30・併用) |
いずれもヒトを対象とした研究です。DOI付きの出典は記事末尾の引用文献に記載しています。効果には個人差があります。
デメリット・安全性・選ぶときの注意点
上清液は無細胞のため免疫の面では扱いやすい一方、製品ごとに組成や品質がばらつくのが最大の注意点です。由来・品質管理・提供元の体制を確認できる医療機関を選ぶことが、安全性の要になります。
安全性は「成分そのもの」と「品質管理」の2つに分けて考えると整理できます。上清液は、他人(ドナー)の細胞に由来することもありますが、細胞そのものを含まないため、細胞移植で問題になるような拒絶反応は限りなく少ないと考えられています。無細胞の分泌物は移植した細胞と違い、免疫の面での反応が起こりにくいと報告されており(前述の Molecular Neurobiology)、これは上清液の利点です。
一方で、より現実的な注意点は品質のばらつきです。脂肪由来幹細胞の上清の研究チームも、上清液は組成が一定しにくく、臨床応用の前に標準化と品質管理が必要だと明確に述べています(前述の Stem Cells International)。つまり「上清液」という名前が同じでも、由来組織・培養方法・滅菌や検査の体制によって中身は大きく変わりえます。
選ぶ際は、(1)由来と品質管理の説明があるか、(2)医師が関与し適応を判断しているか、(3)誇大な表現で断定していないか、を確認してください。安価さや「芸能人も」といった訴求ではなく、体制で選ぶのが安全です。

大阪で再生医療(上清液・幹細胞治療)を検討するなら|Cell Grand Clinic
大阪・心斎橋のセルグランクリニックは、厚生労働省認可(第二種再生医療)のもとで、上清液やエクソソームに加え、本命となるご自身の脂肪由来幹細胞を使った幹細胞治療まで一貫して相談できます。目的に応じて入口から本格治療まで選べます。
上清液は、再生医療の「入口」として選びやすい選択肢です。一方で、より本格的に組織へ働きかけたい場合は、生きた細胞を使う幹細胞治療という選択肢があります。セルグランクリニックでは、エクソソーム・上清液の点滴/局所治療、しわ・たるみの美肌治療、そして本命のご自身の脂肪由来幹細胞による幹細胞治療までを、同じ医師が一貫して担当します。前章までで述べた「即日か・生きた細胞か・上清液か」の見極めを、診察のうえで正直にお伝えします。
幹細胞の品質については、セルグランクリニックは独自基準「Grand Stem Cells」を掲げています。第一に、既製品やストックを使わず、治療決定後に患者自身の組織から専用に培養する完全個別培養。第二に、国際細胞治療学会(ISCT)基準に沿った検査で、正真正銘の間葉系幹細胞であることを確認し、基準未達の細胞は廃棄。第三に、投与直前まで生存率95%以上を確認。第四に、培養を重ねるほど老化する性質をふまえ、Passage 3以下に厳しく制限し、最大2億個の細胞を若さを保ったまま培養します。すべての患者に、これら4基準を満たしたことを記した品質証明書を発行します。
| 観点 | 幹細胞培養上清液 | ご自身の脂肪由来幹細胞治療(本命) |
|---|---|---|
| 位置づけ | 入口・手軽さ重視 | 本格的な再生医療 ✓ |
| 使うもの | 分泌成分(無細胞) | 自分の生きた細胞 ✓ |
| 準備・期間 | 当日投与も可能 | 採取→約7週間培養 ✓ |
| 品質管理 | 製品により差 | ISCT基準・生存率95%以上・Passage 3以下 ✓ |
| 制度 | 自由診療 | 厚労省認可・第二種再生医療 ✓ |
どちらが適するかは、目的・肌状態・ご予算により異なります。医師の診察のうえで判断します。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 幹細胞培養上清液は肌にどんな効果がありますか?
施術併用の小規模試験では、しわ・色素沈着・毛穴・肌のきめの改善が報告されています。ただし多くはレーザーやマイクロニードルとの併用・短期・少人数での結果で、上清液単独や長期の効果は十分に確立していません。効果には個人差があります。
Q2. 幹細胞培養上清液とエクソソームの違いは何ですか?
エクソソームは、上清液に含まれる成分の一つ(細胞外小胞)です。上清液は「成長因子・サイトカイン・エクソソームなどを含む上澄み全体」を指します。ただし美容の現場では、上清液の治療を「エクソソーム」と同義的に呼ぶことも多く、施術前に中身の確認が必要です。
Q3. 幹細胞コスメ(ヒト幹細胞美容液)には幹細胞が入っていますか?
いいえ。幹細胞コスメの多くは、培養上清やそのエキスを配合した化粧品で、生きた幹細胞は入っていません。役割は主に角質層の保湿・整肌で、注入・導入する医療の上清液治療とは作用の深さが異なります。
Q4. 「即日できる幹細胞美容治療」は本物の幹細胞治療ですか?
多くは上清液を使った治療で、生きた幹細胞そのものではありません。自分の生きた幹細胞を使う治療には、採取後約7週間の培養が必要です。「即日・当日」の場合は、生きた細胞か上清液かを必ず確認してください。
Q5. 幹細胞培養上清液の費用はいくらですか?
投与方法(点滴・局所・導入)や回数によって異なります。エクソソーム・上清液の料金や治療内容は、エクソソームの治療ページをご確認いただくか、無料のお問い合わせでご相談ください。
関連コラム
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まとめ
幹細胞培養上清液は、「細胞を含まない、幹細胞の分泌成分の集まり」です。生きた細胞を使う幹細胞治療とも、角質層に働く化粧品とも作用が異なる、第三のカテゴリだと理解すると混乱しません。エクソソームはその成分の一部にすぎず、「幹細胞コスメ」に生きた細胞は入っておらず、「即日できる幹細胞美容」の多くは上清液の治療です。名前ではなく中身で選ぶこと——由来・品質管理・医師の関与を確認することが、後悔しないための近道です。より本格的に検討したい方は、ご自身の脂肪由来幹細胞による幹細胞治療という選択肢もあわせてご相談ください。
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引用文献
- Maacha S, et al. Paracrine Mechanisms of Mesenchymal Stromal Cells in Angiogenesis. Stem Cells Int. 2020;2020:4356359. https://doi.org/10.1155/2020/4356359
- Giannasi C, et al. Towards Secretome Standardization. Stem Cells Int. 2021;2021:3086122. https://doi.org/10.1155/2021/3086122
- Asgari Taei A, et al. Paracrine Effects of Mesenchymal Stem Cells in Ischemic Stroke. Mol Neurobiol. 2022;59(10):6281–6306. https://doi.org/10.1007/s12035-022-02967-4
- Lin TJ, et al. Conditioned Medium of Stem Cells in Facial Resurfacing: Meta-Analysis of RCTs. Aesthetic Plast Surg. 2022;47(2):799–807. https://doi.org/10.1007/s00266-022-03168-z
- Wang X, et al. Protein extracts from medium of adipose-derived stem cells via microneedles on Asian skin. J Cosmet Laser Ther. 2018;20(4):237–244. https://doi.org/10.1080/14764172.2017.1400171
出典はPubMed収載論文に基づく。
監修:若林雄一(医学博士・MD, PhD)|米国再生医療学会認定医(ABRM)・セルグランクリニック(大阪・心斎橋)
最終確認日:2026-07-24
最終更新日:2026.07.25