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COLUMN
2026.04.20
コラム

認知症予防|Lancet 14リスク因子で45%低下を狙う生活習慣と最新エビデンスを医師が徹底解説

認知症予防は「100%防ぐ」ことはできませんが、Lancet 2024委員会は、14の修正可能なリスク因子に生涯を通じて取り組むことで、世界の認知症の最大45%が予防または発症遅延が可能と報告しました。教育、難聴対策、運動、食事、睡眠、社会参加、生活習慣病管理など、いずれも今日から始められる行動です。本記事では「何を」「どの順番で」始めれば良いかを、医師が国際的エビデンスに基づき解説します。

【画像】記事冒頭:脳のイラスト+「14のリスク因子」をビジュアル化したインフォグラフィック

認知症予防とは|「発症を遅らせる・防ぐ」は本当に可能か

▼ ダイレクトアンサー
認知症予防には3段階あります。①一次予防:発症前にリスク因子を減らす、②二次予防:軽度認知障害(MCI)の段階で進行を遅らせる、③三次予防:発症後の進行を遅らせる──この3段階を意識した取り組みが重要です。

認知症予防とは、「認知症の発症リスクを下げる」「発症時期を遅らせる」「発症後の進行を緩やかにする」ための医学的・生活的アプローチを指します。かつては「年齢とともに避けられないもの」と考えられていた認知症ですが、近年の大規模疫学研究と国際委員会の報告により、ライフスタイルと医療介入によって相当数のケースは予防可能であることが明らかになってきました。

特に2024年に医学雑誌「Lancet」が発表した最新の認知症委員会報告では、世界の認知症の約45%が修正可能なリスク因子に起因すると推計され、世界中の認知症医療の方向性を大きく変えました。

認知症予防とは|「発症を遅らせる・防ぐ」は本当に可能か

▼ ダイレクトアンサー
認知症予防には3段階あります。①一次予防:発症前にリスク因子を減らす、②二次予防:軽度認知障害(MCI)の段階で進行を遅らせる、③三次予防:発症後の進行を遅らせる──この3段階を意識した取り組みが重要です。

なぜ今、認知症予防が重要なのか|日本の高齢化と500万人時代

▼ ダイレクトアンサー
日本では2025年に認知症の人が約500万人に達すると推計されています。介護負担、医療費、家族の生活への影響を考えると、「治療」だけでなく「発症前からの予防」が国家的課題となっています。

日本の認知症人口は加速度的に増えています。厚生労働省の推計では、2025年には認知症の高齢者が約500万人に達すると推定されています。さらに軽度認知障害(MCI)を含めると、その数は1,000万人を超える可能性があります。

認知症は本人のQOL(生活の質)だけでなく、介護を担う家族の生活、社会保障費にも大きな影響を与えます。だからこそ、発症してからの治療だけでなく「発症前から、何をすれば良いのか」を知り、行動することが重要なのです。

認知症の主な4タイプと原因|アルツハイマー型・血管性・レビー小体型・前頭側頭型

▼ ダイレクトアンサー
認知症は単一の病気ではなく、原因の異なる複数の疾患の総称です。代表的なのは①アルツハイマー型(約7割)、②血管性、③レビー小体型、④前頭側頭型の4タイプ。タイプによって予防アプローチも一部異なります。

タイプ主な原因・特徴予防のポイント
アルツハイマー型認知症脳内にアミロイドβ・タウタンパクが蓄積。記憶障害が初期症状生活習慣病管理、運動、食事、社会参加
血管性認知症脳梗塞・脳出血など脳血管障害が原因高血圧・糖尿病・喫煙・脂質異常症の管理
レビー小体型認知症脳内にレビー小体が蓄積。幻視・パーキンソン症状を伴う早期発見・運動・転倒予防
前頭側頭型認知症前頭葉・側頭葉の萎縮。性格変化・行動異常早期診断・周囲のサポート

特に頻度が高いアルツハイマー型と血管性は、生活習慣病の管理と生活習慣の改善で発症リスクを下げられることが多くの研究で示されています。

認知症の主な4タイプと原因|アルツハイマー型・血管性・レビー小体型・前頭側頭型

Lancet 2024委員会|14のリスク因子で最大45%予防できる根拠

▼ ダイレクトアンサー
英国・米国などの認知症研究者27名で構成された「Lancet委員会」は2024年、認知症のリスク因子を14項目に拡張し、これらに生涯を通じて取り組めば世界の認知症の約45%を予防または遅延できると報告しました(Livingston G, et al. Lancet 2024)。

世界的な医学雑誌「Lancet(ランセット)」は2017年・2020年・2024年と3度にわたり、認知症の予防・介入・ケアに関する委員会報告を発表してきました。2024年版では、修正可能なリスク因子が12項目から14項目に拡張され、予防可能割合が従来の40%から45%に引き上げられました。

Lancet 2024委員会が示した14のリスク因子

ライフステージリスク因子寄与割合の目安
若年期(45歳未満)教育歴の低さ5%
中年期(45〜65歳)難聴7%
中年期LDLコレステロール高値(新規)7%
中年期うつ3%
中年期頭部外傷3%
中年期運動不足2%
中年期喫煙2%
中年期高血圧2%
中年期肥満1%
中年期過度な飲酒1%
高齢期(65歳以上)社会的孤立5%
高齢期大気汚染3%
高齢期視力低下(新規)2%
高齢期糖尿病2%
合計 約45%

このうち、2024年版で新たに追加された因子は「LDLコレステロール高値」と「未治療の視力低下」の2つです。逆に言えば、残りの55%は遺伝・加齢など現時点では修正困難な要因ですが、それでも45%もの認知症が「自分の行動」で予防し得るというのは大きな希望です。

① 教育・知的活動|認知症予防に効く「認知予備能」を生涯通じて鍛える

▼ ダイレクトアンサー
教育年数の長さや知的活動への積極的参加は、脳に「認知予備能(Cognitive Reserve)」を蓄え、認知症発症リスクを下げます。読書、学習、楽器演奏、新しい趣味への挑戦が代表的な習慣です。

認知予備能」とは、脳が病的変化に対してどれだけ耐えられるかという余力のことです。教育歴、知的職業、趣味活動を通じて、神経ネットワークが豊かに発達した脳は、加齢やアミロイドβの蓄積が起きても症状が出にくいと考えられています。

中年期以降からでも遅くありません。新しいスキルや言語学習、楽器、絵画、囲碁・将棋など「新規性のある知的活動」は脳を活性化させます。家族や友人との会話、地域のサークル活動も含め、「考えながら学ぶ」習慣を生涯にわたって続けることが大切です。

② 生活習慣病の徹底コントロール|高血圧・糖尿病が認知症リスクを高める理由

▼ ダイレクトアンサー
高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満は、いずれも血管性認知症だけでなくアルツハイマー型認知症のリスクも高めます。中年期からの継続的な治療と食事・運動管理が、最も有効な予防法のひとつです。

中年期(45〜65歳)の血圧コントロールは、認知症予防において最も重要な医学的介入のひとつです。Lancet委員会は、収縮期血圧を130mmHg未満に維持することを推奨しています。

糖尿病もアルツハイマー型認知症のリスクを高めます。インスリン抵抗性が脳のアミロイド代謝に影響することが分かっており、HbA1cの管理は脳の健康にも直結します。

2024年に追加された「LDLコレステロール高値」は、中年期からの脂質管理の重要性を示しています。動脈硬化を進めることで脳血管障害を起こすだけでなく、神経炎症や血液脳関門の障害にも関わると考えられています。

③ 食事による認知症予防|MIND食・地中海食のエビデンスと実践メニュー

▼ ダイレクトアンサー
「MIND食」は地中海食とDASH食を組み合わせた食事法で、米国ラッシュ大学の前向きコホート研究では、最も忠実に実践した群はアルツハイマー型認知症の発症リスクが約53%低下しました(Morris MC, et al. Alzheimer’s & Dementia 2015)。

MIND食(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)は、米国ラッシュ大学医療センターの研究グループが提唱した認知症予防のための食事法です。地中海食(魚・オリーブオイル・ナッツ)と高血圧予防食であるDASH食を組み合わせ、特に脳に良い10の食品群を増やし、避けるべき5つの食品群を減らすという構成です。

MIND食で増やしたい食品:緑黄色野菜(特に葉物野菜)、その他の野菜、ナッツ類、ベリー類、豆類、全粒穀物、魚、鶏肉、オリーブオイル、ワイン(少量)

MIND食で控えたい食品:赤身肉、バター・マーガリン、チーズ、菓子・スイーツ、揚げ物・ファストフード

ラッシュ大学が実施したこの前向きコホート研究では、平均年齢81歳の高齢者923名を平均4.5年追跡。MIND食の遵守度を3群(低・中・高)に分けて比較したところ、最も忠実に実践した群はアルツハイマー型認知症の発症リスクが、最も実践していない群と比べてハザード比0.47(95%信頼区間:0.26〜0.76)と、約53%低下していました(Morris MC, et al. Alzheimer’s & Dementia 2015)。

さらに同グループの別研究(960名を平均4.7年追跡)では、MIND食を実践している人は認知機能の年間低下速度がより緩やかで、最高3分位群は最低3分位群と比べて、認知年齢が約7.5歳若い状態と推定されました(β=0.0092、P<0.0001)。

③ 食事による認知症予防|MIND食・地中海食のエビデンスと実践メニュー

▼ ダイレクトアンサー
「MIND食」は地中海食とDASH食を組み合わせた食事法で、米国ラッシュ大学の前向きコホート研究では、最も忠実に実践した群はアルツハイマー型認知症の発症リスクが約53%低下しました(Morris MC, et al. Alzheimer's & Dementia 2015)。

MIND食(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)は、米国ラッシュ大学医療センターの研究グループが提唱した認知症予防のための食事法です。地中海食(魚・オリーブオイル・ナッツ)と高血圧予防食であるDASH食を組み合わせ、特に脳に良い10の食品群を増やし、避けるべき5つの食品群を減らすという構成です。

MIND食で増やしたい食品:緑黄色野菜(特に葉物野菜)、その他の野菜、ナッツ類、ベリー類、豆類、全粒穀物、魚、鶏肉、オリーブオイル、ワイン(少量)

MIND食で控えたい食品:赤身肉、バター・マーガリン、チーズ、菓子・スイーツ、揚げ物・ファストフード

④ 運動による認知症予防|有酸素・筋トレ・コグニサイズの組み合わせ

▼ ダイレクトアンサー
運動不足は認知症リスク因子のひとつ。有酸素運動と筋力トレーニングに加え、日本で開発された「コグニサイズ」(運動+認知課題)が、軽度認知障害(MCI)の方の認知機能改善に有効と報告されています(Suzuki T, et al. PLoS One 2013)。

有酸素運動(ウォーキング、水泳、自転車など)は、脳血流を増やし、海馬の神経新生を促すことが動物実験・臨床研究で示されています。週150分以上の中等度の有酸素運動が世界的な推奨です。

筋力トレーニングも重要です。サルコペニア(筋肉減少)は転倒・寝たきり・認知症と関連します。スクワットやかかと上げなど、自宅でできる種目から始めましょう。

コグニサイズ(Cognicise)は、日本の国立長寿医療研究センターで開発された、運動と認知課題を同時に行うプログラムです。歩きながら100から3を引いていく、ステップを踏みながらしりとりをする、といった「デュアルタスク」が脳を活性化します。

国立長寿医療研究センターの鈴木隆雄博士らが軽度認知障害(MCI)の高齢者100名(平均年齢75歳)を対象に行ったランダム化比較試験では、週2回・1回90分・6か月間のコグニサイズプログラムを実施した群は、健康教育のみの対照群と比べて、特に健忘型MCIのサブグループでMMSE(認知機能検査)が有意に改善(P=0.04)し、論理的記憶テストも有意に改善(P=0.04)しました(Suzuki T, et al. PLoS One 2013)。

【画像】コグニサイズの実践例3パターン(ウォーキング+計算、ステップ+しりとりなど)

⑤ 睡眠・うつ・社会的孤立対策|認知症予防のための脳いたわり習慣

▼ ダイレクトアンサー
質の良い睡眠は脳内のアミロイドβ排出に不可欠。1日7時間前後の睡眠を確保し、うつ症状や社会的孤立があれば早めに対処することが、認知症予防につながります。

睡眠中、脳内では「グリンパティック系」と呼ばれる老廃物排出システムが活発に働き、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβも除去されると考えられています。睡眠時間が短すぎる(5時間未満)人、長すぎる(9時間超)人いずれも認知症リスクが高いとする報告があり、1日7時間前後の規則正しい睡眠が推奨されます。

うつ症状は、それ自体が認知症の症状と紛らわしいだけでなく、未治療のうつは将来の認知症リスクを高めます。「最近、何をしても楽しくない」「眠れない」「食欲がない」が2週間以上続くなら、心療内科や精神科への相談を検討してください。

社会的孤立もLancet委員会が高齢期の主要リスクと位置づける因子です。家族・友人との交流、地域活動、ボランティア、趣味のサークルなど、「人と関わる時間」を意識的に確保することが、脳の健康に直結します。

⑥ 難聴・視力・大気汚染|2024年版で追加された認知症の新規リスク因子

▼ ダイレクトアンサー
中年期の難聴は単独で最大のリスク因子(寄与割合7%)。米国で行われたACHIEVE試験では、認知症リスクの高い高齢者で補聴器使用が認知機能低下を抑制した可能性が示唆されています(Lin FR, et al. Lancet 2023)。視力低下も2024年に新規追加されました。

難聴は2024年Lancet報告でも引き続き「中年期最大のリスク因子」と位置づけられています。聴こえにくさは脳への聴覚刺激を減らし、社会的孤立も招くため、二重の意味で認知症リスクを高めます。

米国ジョンズ・ホプキンス大学を中心に行われたACHIEVE試験は、70〜84歳の高齢者977名を対象に、補聴器+聴覚リハビリテーションを行う群と、健康教育のみの対照群を3年間比較したランダム化比較試験です(Lin FR, et al. Lancet 2023, NCT03243422)。試験全体では認知機能低下に有意差はみられませんでしたが、心血管リスクが高い高齢者のサブグループでは、補聴器使用群の方が3年間の認知機能低下が緩やかであったことが示唆されました。難聴のセルフチェックや早期の補聴器導入は、今後さらに重要性が増す予防策です。

視力低下も2024年新規追加因子。白内障手術、定期的な眼科検診、適切な眼鏡の使用は、脳への視覚刺激を保つ重要な手段です。

大気汚染(PM2.5)への長期曝露も認知症リスクと関連します。屋外活動時間が長い場合は、PM2.5予報を確認したり、室内の空気清浄機を活用したりといった対策が考えられます。

頭部外傷は、転倒予防、自動車・自転車利用時のシートベルト・ヘルメット着用、コンタクトスポーツでの安全対策が予防につながります。

再生医療・幹細胞治療という新たな認知症治療の選択肢|CELL GRAND CLINICの取り組み

▼ ダイレクトアンサー
生活習慣の改善や薬物療法に加え、近年注目されているのが幹細胞治療・エクソソーム療法など再生医療の選択肢です。MCIや初期認知症の段階で、神経保護・神経再生を促進するアプローチとして、国内外で研究が進んでいます。

CELL GRAND CLINICでは、自己脂肪由来幹細胞(ADSC)の点滴投与など、厚生労働省に第二種再生医療等提供計画として届出済みの治療プロトコルを提供しています。生活習慣の改善や薬物療法と並行し、「神経炎症の抑制・血管内皮機能の改善・パラクリン効果による神経保護」を目的とした補完的な選択肢として、専門医による適応評価のもと検討します。

ただし、再生医療は「魔法」ではなく、生活習慣の改善や生活習慣病の管理、適切な薬物療法と組み合わせることで初めて意味を持ちます。

認知症・アルツハイマー病に対する幹細胞治療の費用・効果・最新エビデンスは、CELL GRAND CLINICの認知症再生医療コラムで詳しく解説しています。

再生医療が脳と神経の保護に与える可能性

多面的介入による認知症予防の臨床試験|FINGER試験とJ-MINTが示した可能性

▼ ダイレクトアンサー
フィンランドで行われたFINGER試験は、世界で初めて多面的な生活習慣介入で認知機能維持を実証した大規模ランダム化比較試験です(Ngandu T, et al. Lancet 2015)。日本でも同様の研究「J-MINT」が進められています。

FINGER試験(Finnish Geriatric Intervention Study)は、認知症リスクの高い高齢者1,260名60〜77歳、フィンランド)を対象に、運動・栄養指導・認知トレーニング・血管リスク管理の4つを組み合わせた2年間の多面的介入を行った世界初の大規模ランダム化比較試験です(Ngandu T, et al. Lancet 2015, NCT01041989)。

結果、多面的介入群は対照群と比べて総合的な認知機能スコアが有意に良好で、生活習慣の包括的な改善が認知機能維持に有効であることが世界で初めて科学的に示されました。

この成功を受け、日本でも国立長寿医療研究センターを中心にJ-MINT(Japan-Multimodal Intervention Trial for Prevention of Dementia)が実施され、日本人高齢者を対象とした多面的介入の有効性が検証されています。

ポイントは「1つの行動だけでなく、複数のアプローチを組み合わせること」です。食事・運動・社会参加・血圧管理を同時並行で取り組むことで、相乗効果が期待できるのが多面的介入の本質です。

【画像】FINGER試験の介入4要素を四つ葉のクローバーで表現

軽度認知障害(MCI)に気づいたら|早期受診と「予防的介入」のチャンス

▼ ダイレクトアンサー
MCI(軽度認知障害)は認知症の前段階で、年間約10〜15%が認知症に進行する一方、適切な介入で正常範囲に戻るケースもある重要な「介入の窓」です。家族が異変に気づいたら、早めに認知症専門医・脳神経内科を受診しましょう。

MCI(Mild Cognitive Impairment)は、年齢相応の物忘れと認知症の中間に位置する状態で、日常生活に大きな支障はないものの、客観的な認知機能検査で軽度の低下が認められる段階です。

MCIの方は年間約10〜15%が認知症に進行するとされる一方で、生活習慣の改善・運動・認知トレーニング・基礎疾患の管理などの介入で、正常範囲に戻る人も一定割合いることが知られています。だからこそMCIの段階での発見と介入が「予防の最大のチャンス」と言えます。

こんなサインに気づいたら受診を

  • 同じ話を何度も繰り返す
  • 約束や予定を頻繁に忘れる
  • 慣れた道で迷うことがある
  • 料理の段取りが悪くなった
  • 趣味への興味が薄れた
  • 性格が以前と変わった

医療機関では、MMSE・MoCA-Jなどの認知機能検査、MRI・CTによる画像検査、必要に応じてアミロイドPETや脳脊髄液バイオマーカー検査などを行い、原因と進行リスクを評価します。

軽度認知障害(MCI)に気づいたら|早期受診と「予防的介入」のチャンス

新薬レカネマブ時代の予防|疾患修飾療法と生活習慣の両輪

▼ ダイレクトアンサー
2023年にFDA・PMDA承認されたレカネマブ(商品名レケンビ)は、アルツハイマー病の原因物質アミロイドβに直接作用する初の本格的な疾患修飾療法。早期アルツハイマー病1,795名を対象とした第3相試験(CLARITY AD)で、18か月時点の認知機能低下を有意に抑制しました(van Dyck CH, et al. NEJM 2023)。

レカネマブ(lecanemab)はアルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドβに対するモノクローナル抗体で、エーザイとバイオジェンが共同開発しました。

第3相試験「CLARITY AD」では、早期アルツハイマー病(MCIまたは軽度認知症)の患者1,795名(年齢50〜90歳)を対象に、レカネマブ群とプラセボ群を18か月間比較。主要評価項目であるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes、値が大きいほど悪化)の悪化が、プラセボ群1.66に対しレカネマブ群1.21と、進行を有意に抑制することが示されました(van Dyck CH, et al. NEJM 2023)。

ただし、レカネマブにはARIA(アミロイド関連画像異常)と呼ばれる脳浮腫・微小出血の副作用があり、定期的なMRI監視が必要です。また、対象は早期アルツハイマー病に限定されており、進行例には適応がありません。

つまり新薬は「発症してから・早期のうちに」使うものであり、新薬の登場後も、生活習慣による予防の重要性は変わりません。むしろ予防と早期発見、そして新薬による疾患修飾、再生医療による神経保護を「両輪・三輪」で組み合わせることが、これからの認知症医療のあるべき姿です。

まとめ|今日から始める認知症予防の10ステップ

認知症予防は「特別なこと」ではなく、血圧管理・運動・食事・睡眠・社会参加など、健康寿命を延ばすあらゆる行動の積み重ねです。下記の10ステップから、まずは自分が始めやすい1〜2つを選んで取り組みましょう。

  1. 血圧を測る習慣を持ち、130/80mmHg未満を目指す
  2. HbA1c・LDLコレステロールを年1回以上チェック
  3. 週150分以上の有酸素運動+週2回の筋トレ
  4. MIND食を意識:葉物野菜・ベリー類・魚・ナッツ・オリーブオイル
  5. 1日7時間前後の規則正しい睡眠
  6. 聞こえにくさ・見えにくさを感じたら早めに専門医へ
  7. 新しい趣味・学びで脳に刺激を与える
  8. 人と話す時間を1日30分以上
  9. 禁煙・節酒(純アルコール20g/日以内)
  10. 物忘れが気になり始めたら、迷わず専門医を受診

よくある質問(FAQ)

Q1. 何歳から認知症予防を始めるべきですか?

理想は40代からです。Lancet委員会も中年期(45〜65歳)の介入を最重要視しています。ただし、何歳から始めても遅すぎるということはなく、70代・80代からの生活習慣改善でも認知機能維持に効果があると報告されています。

Q2. 認知症は遺伝しますか?

家族性アルツハイマー病(APP・PSEN1・PSEN2遺伝子変異)など、強く遺伝する型はごく一部です。多くの認知症は遺伝的素因と生活習慣・環境要因が複雑に関わって発症します。家族歴があっても、修正可能なリスク因子に取り組めば発症リスクを下げられます。

Q3. 認知症予防に効くサプリメントはありますか?

DHA・EPA、ビタミンB群、ビタミンD、ポリフェノールなどが研究されていますが、「これを飲めば認知症を防げる」と科学的に確立されたサプリメントはありません。サプリメントよりも食事・運動・睡眠・社会参加の方がエビデンスは強固です。

Q4. コーヒーや緑茶は認知症予防になりますか?

複数の疫学研究で、適度なコーヒー・緑茶摂取は認知症リスクの低下と関連することが示されています。ただし飲み過ぎは睡眠の質を下げる可能性があるため、カフェインは午後3時頃までに切り上げるのが理想です。

Q5. お酒はどのくらいまでなら大丈夫ですか?

Lancet委員会は「過度な飲酒(週21単位以上)」をリスク因子としています。日本酒に換算すると週7合以上が目安。純アルコール20g/日以内(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)を上限と考え、休肝日を週2日以上設けましょう。

Q6. 認知症の予兆はどのように見分けますか?

加齢による物忘れは「体験の一部を忘れる」「ヒントで思い出せる」のに対し、認知症は「体験そのものを忘れる」「ヒントでも思い出せない」点が異なります。さらに、判断力の低下、約束を繰り返し忘れる、慣れた道で迷う、性格の変化などが見られたら受診のサインです。

Q7. MCIと診断されたら何をすればよいですか?

①生活習慣病の徹底管理、②週150分以上の有酸素運動、③MIND食、④認知トレーニング・社会参加、⑤睡眠・うつ・難聴の治療を同時に始めることが重要です。FINGER試験のような多面的介入が有効とされており、専門医・管理栄養士・理学療法士と連携してプログラムを組むことが推奨されます。

Q8. 認知症予防のために定期的に受けたほうが良い検査はありますか?

40代以降は血圧・血糖(HbA1c)・LDLコレステロール・体重・聴力・視力を年1回以上チェックすることをおすすめします。物忘れが気になる場合は、認知症専門外来や脳神経内科でMMSE・MoCA-J・MRIなどの検査を受けると良いでしょう。

Q9. 仕事を引退した後に認知機能が落ちる気がします。どうすれば良いですか?

引退後の役割喪失と社会的孤立は認知症リスクを高めます。ボランティア、地域活動、趣味のサークル、再雇用、新しい学び(大学公開講座・オンライン学習)など、「役割」と「人とのつながり」を意識的に作ることが大切です。

Q10. 認知症予防に運動と勉強、どちらが大切ですか?

どちらも大切ですが、エビデンスが特に強固なのは運動です。理想は「運動と知的活動を組み合わせる」こと。コグニサイズ、ダンス、楽器演奏、囲碁・将棋(移動を伴う対局)など、身体活動と認知活動を同時に行うデュアルタスクが最も効率的とされています。

Q11. 再生医療・幹細胞治療はどんな人が検討できますか?

主にMCI(軽度認知障害)から軽度〜中等度の認知症の方が検討の対象になります。重度の認知症や、進行が極めて速いケースでは効果が限定的です。詳細はCELL GRAND CLINICの認知症再生医療コラムをご参照ください。適応の可否は専門医による事前のカウンセリングと検査で判断します。

Q12. レカネマブを使えば、生活習慣の改善は不要ですか?

いいえ、生活習慣の改善は引き続き必須です。レカネマブは早期アルツハイマー病に限定された治療で、進行を「遅らせる」効果が中心であり、根治薬ではありません。生活習慣による予防、新薬、再生医療を多角的に組み合わせることが重要です。

Q13. 大阪・関西で認知症予防や再生医療の相談ができる施設はありますか?

大阪市内のCELL GRAND CLINICでは、認知症・アルツハイマー病・MCIに対する再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療など)のカウンセリングと治療を行っています。日本抗加齢医学会専門医・アメリカ再生医療学会専門医の院長が、生活習慣改善と再生医療の両面からアドバイスを行います。

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引用文献

  1. Livingston G, Huntley J, Liu KY, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404(10452):572-628. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(24)01296-001296-0)
  2. Ngandu T, Lehtisalo J, Solomon A, et al. A 2 year multidomain intervention of diet, exercise, cognitive training, and vascular risk monitoring versus control to prevent cognitive decline in at-risk elderly people (FINGER): a randomised controlled trial. Lancet. 2015;385(9984):2255-2263. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(15)60461-560461-5)
  3. Morris MC, Tangney CC, Wang Y, et al. MIND diet associated with reduced incidence of Alzheimer’s disease. Alzheimers Dement. 2015;11(9):1007-1014. https://doi.org/10.1016/j.jalz.2014.11.009
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最終更新日:2026.04.20

                           

【監修医師】

若林雄一                                    

若林 雄一

                                   

セルグランクリニック院長/医師/医学博士

                                   

【専門分野】
再生医療 幹細胞治療 抗加齢医療 予防医療 美容エイジングケア 放射線医学 

【所属学会・資格】
アメリカ再生医療学会(AARM)専門医/日本抗加齢医学会 専門医/放射線診断専門医/核医学専門医/日本再生医療学会 会員/日本認知症学会 会員                                        

【臨床実績】幹細胞治療 累計3,000件以上(変形性膝関節症・糖尿病・慢性疼痛・美容エイジングケア等)

【略歴】                                        
神戸大学医学部卒業、神戸大学大学院修了(医学博士)。米国国立衛生研究所(NIH)にて研究に従事。近畿大学医学部講師を経てセルグランクリニック 院長就任

【著書・メディア掲載】
著書:『世界一簡単な再生医療の基礎知識』/米国経済誌「ウォール・ストリート・ジャーナル」掲載 /KBS京都テレビ 出演 /国際学術誌に多数の論文を発表 

【監修者としての方針】
本コラムの医学的内容は、再生医療等安全性確保法に基づき厚生労働省へ第二種・三種 再生医療等提供計画を届出済(計画番号:PB5240089ほか)の当院院長が監修しています。科学的根拠(エビデンス)と安全性を重視し、正確でわかりやすい情報発信を心がけています。