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COLUMN
2025.09.06
コラム

NMNで若返りは可能か?最新研究から見る効果と安全性

NMNとは何か?なぜ注目されるのか

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド) は、ビタミンB₃(ナイアシン)の一種で、体内で NAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド) に変換されます。

NAD⁺は次のような重要な働きを担っています。

  • 細胞のエネルギー代謝(酸化還元反応)を支える
  • サーチュイン(長寿遺伝子産物) を活性化する
  • PARP(DNA修復酵素) の働きを助ける

加齢とともに体内のNAD⁺は減少し、そのことが老化や生活習慣病の一因になることが研究で示されています。そこで、前駆体であるNMNを補うことで体内NAD⁺を増やし、細胞の若返りや老化関連疾患の予防につなげようという発想が注目を集めています。

NMNの抗老化作用と認知機能への影響

<動物実験での知見>

  • NMN投与により肝臓・筋肉・脂肪組織などで低下していたNAD⁺量が回復
  • 老化に伴う代謝異常や機能低下を遅らせる効果が多数報告
  • マウスでは 寿命延長や代謝改善 にもつながったとされる

<ヒトでの研究>

人間における明確な「抗老化効果(健康寿命の延長)」は、現時点では十分なエビデンスが揃っていません。ただし、細胞レベルでは興味深い報告が出ています。

  • 中年層に短期的にNMNを投与 → 免疫細胞のテロメア長が延長(細胞老化の指標改善)
  • 複数試験をまとめた解析では → 血圧や空腹時血糖の低下傾向 を確認

いずれも小規模な試験ですが、NMNが細胞老化マーカーを改善し、生活習慣病リスクを軽減する可能性を示しています。

認知症予防への可能性

老化はアルツハイマー型認知症の最大リスク要因です。近年の研究では、NAD⁺の減少が神経変性に関与している可能性が示されています。

NAD⁺は脳内で次のような働きを持ちます。

  • ニューロンのエネルギー産生を維持
  • 遺伝子発現を調節
  • サーチュイン経路を介して神経細胞のストレス耐性を高める

実際、マウスの研究では NAD⁺前駆体の補給が認知機能低下を抑制した例もあります。

現在は、軽度認知障害の高齢者を対象としたNMNやNRの臨床試験が進行中ですが、2025年時点ではまだ結論は出ていません。とはいえ、脳のエネルギー代謝や神経保護の観点からNMNは有望視されており、将来的に認知症予防策の一つとなる可能性があります。

エネルギー代謝の改善 – ミトコンドリア機能と糖代謝

近年、NMNの代謝改善効果を示す臨床研究が報告され始めています。特に注目されるのが、ワシントン大学グループによる 10週間の無作為化プラセボ対照試験 です 。

対象:閉経後の過体重・肥満の前糖尿病女性25名
方法:NMN 250mg/日 またはプラセボを10週間投与
結果:
・NMN群で骨格筋のインスリン感受性が有意に改善(血糖取り込み能力が向上)
・プラセボ群では変化なし
・筋肉生検では、インスリン経路のタンパク質(AktやmTOR)の活性化が確認
・筋組織のリモデリング関連遺伝子も上昇

つまり、インスリン抵抗性を持つ中高年女性においてNMNが筋肉の代謝を改善したことが示されました。この成果は一流誌 Science に掲載され、ヒトでのNMN有用性を裏付ける初めての臨床エビデンスとして注目されています。

さらに日本や中国で行われた試験でも次のような知見が得られています。

中国の多施設RCT(40〜60代・66名):NMN 300mg/日を8週間投与

  • HOMA-IR(インスリン抵抗性指標)は悪化せず維持(プラセボ群は悪化)
  • 血中NAD⁺濃度が平均38%上昇(プラセボ群14%増)
  • QOL指標(SF-36)も軽度改善

別解析:

  • 収縮期、拡張期血圧が数mmHg低下
  • 動脈硬化指標(脈波伝播速度:baPWV)が改善

NMNはインスリン感受性を高め、血糖・血圧・血管機能を改善する可能性があり、糖尿病予備群やメタボリックシンドロームの予防に有望と考えられます。

筋力・持久力への効果 – アスリートと高齢者の場合

NMNは「代謝改善」だけでなく、「運動能力のサポート」も注目されています。

<アスリートでの研究>

2021年に報告された中国の研究では、アマチュアランナー48名を対象にNMN(300・600・1200mg/日)を6週間摂取しながら持久トレーニングを行いました。

  • VT1(第一無酸素性作業閾値)やVO₂の改善幅がプラセボ群より大きい
  • 特に600〜1200mg群で効果が顕著
  • 最大酸素摂取量(VO₂max)や心機能指標には大きな変化なし

研究者らは「筋肉の酸素利用効率が高まり、持久的パフォーマンスが向上した可能性がある」と結論づけています。

<高齢者での研究>

日本の二重盲検試験では、65歳以上の健常男性42名を対象にNMN 250mg/日を12週間投与 。

  • 歩行速度(10m歩行テスト)と握力が有意に向上
  • 30秒椅子立ち上がりテストも6週時点で改善
  • 筋肉量(除脂肪量や筋断面積)には変化なし

筋機能面の改善が確認され、サルコペニア予防に有効である可能性が示されました。

ポイントまとめ

代謝改善:中高年でインスリン感受性や血糖コントロールが改善
血管機能:血圧や動脈硬化の指標が改善傾向
運動能力:アスリートで持久力向上、高齢者で歩行速度や握力の改善
健康寿命:糖尿病予備群・メタボ予防、サルコペニア対策に期待

NMNの安全性 – 副作用と耐容性

これまでの研究から、NMNは比較的安全性が高い成分であることがわかっています。人を対象にした臨床試験でも、重い副作用は報告されていません。

初期の研究

健康な成人にNMNを飲んでもらった試験では、血圧や心拍などに大きな変化はなく、体調に悪影響は見られませんでした。血液検査でわずかな数値の変動はあったものの、すべて正常の範囲内で問題はありません。睡眠や視力への影響も確認されませんでした。

継続的な摂取

その後の研究では、やや高めの量を数週間続けて摂取しても特に問題はなく、体重や血圧、肝臓や腎臓の働きにも影響は見られませんでした。高齢者を対象にした試験でも、安全性に関してプラセボ(偽薬)との差はありませんでした。

注意点

  • NMNはまだ比較的新しい成分で、長期的な影響(数年以上)については十分に分かっていない
  • 一部では「軽い疲れや消化不良」といった報告もあるが、NMNが直接の原因かは不明
  • 妊娠中・授乳中の方や、重い病気を持つ方での検証は進んでいない

まとめると、短期から中期の摂取では安全性が高いと考えられるが、長期的な研究はこれからという段階です。

摂取方法と適切な投与量 – 経口 vs 点滴の比較

NMNを取り入れる方法には、経口摂取(サプリメント) と 点滴投与(静脈注射) の2種類があります。それぞれの特徴を整理してみましょう。

■ 経口摂取(サプリメント)

もっとも一般的な方法で、日常的に取り入れやすいのが経口サプリメントです。

メリット

  • 手軽で続けやすい
  • 費用も比較的安価
  • これまでの臨床研究の多くは経口NMNで行われており、エビデンスが豊富

摂取量の目安

  • 臨床試験では1日250〜500mgが中心
  • 一部の研究では600〜1200mgまで使用され、安全性も確認済み
  • 高用量で効果がやや強まる傾向はあるが、500mg程度でも十分に血中NAD⁺を増やせる

注意点

  • 消化管で分解されるため、摂取した量のすべてが吸収されるわけではない
  • とはいえヒト試験では、経口でも十分にNAD⁺の増加が得られている

現時点での標準的な使い方は、1日250〜500mgを継続し、必要に応じて調整する方法とされています。

■ 点滴投与(静脈注射)

医療機関で行われるNMN点滴は、NMNやNAD⁺を直接血管から投与する方法です。

メリット

  • 経口よりも素早く、より高濃度にNAD⁺を血中に届けられる
  • 投与後すぐに血中NAD⁺が上昇することが報告されている
  • 中性脂肪が一時的に低下するなどの効果も観察された

安全性

  • 短時間の点滴では心電図や血圧への影響はなく、概ね安全とされる
  • 即効性を期待した一時的な施術としては有用

注意点

  • 長期的なアンチエイジング目的で繰り返し行う有効性については、まだ十分なエビデンスがない

NMNを使う際の注意点

過剰摂取は不要:NAD⁺は体内で一定量あれば酵素活性に十分で、それ以上増やしても効果が頭打ちになる可能性があります。
品質に注意:臨床試験では純度の高い医療グレードが使用されていますが、市販サプリは品質にばらつきがあります。信頼できる製品を選ぶことが大切です。
専門家への相談:持病がある方や継続的な利用を考えている方は、医師に相談して適切な量と方法を決めるのがおすすめです。

よくある質問(FAQ)

Q1. NMNとは何ですか?
NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)はビタミンB₃の一種で、体内で老化防止に重要な「NAD⁺」という補酵素に変換される物質です。細胞のエネルギー産生やDNA修復を助け、抗老化効果が期待されています。

Q2. NMNにはどのような効果がありますか?
抗老化作用、認知機能改善、糖代謝やインスリン感受性の改善、筋力・持久力向上などの効果が、動物実験やヒトの臨床研究で報告されています。ただし、人間における長期的な健康寿命の延伸効果については、まだ研究途上です。

Q3. NMNの安全性は確立されていますか?
現在までの研究では、副作用はほとんどなく、安全性は高いとされています。特に短期~中期(数週間~数ヶ月)の摂取では重大な問題は報告されていません。ただし、長期(年以上)使用の影響や妊婦・授乳中の安全性については未だ十分なデータがありません。

Q4. NMNはどのくらい摂取すればよいですか?
臨床試験で効果が認められた摂取量は一般的に1日250mg~500mg程度です。研究では最大1250mgまで安全に使用されていますが、過剰摂取が必ずしも効果を高めるわけではありません。初めての場合は250mg程度から開始し、体調を見ながら調整することをおすすめします。

Q5. 経口摂取と点滴投与はどちらが効果的ですか?
日常的な使用では経口摂取が一般的で、長期間続けやすい方法です。一方、点滴投与はNMNを迅速かつ高濃度で体内に届ける利点がありますが、長期的な抗老化効果の差は明確ではありません。実際の使用法はライフスタイルや目的に応じて選択しましょう。

Q6. NMNを摂取して効果が現れるまでの期間は?
個人差はありますが、臨床試験では数週間~数ヶ月程度で代謝改善や筋力向上といった効果が認められています。ただし、認知機能や抗老化効果については長期的な観察が必要です。

Q7. NMNの摂取に副作用はありますか?
これまでの研究では重篤な副作用はほとんどありませんが、ごく一部で軽度の疲労感や消化不良などの報告があります。ただし因果関係は不明であり、一般的には非常に安全性が高いと考えられています。

Q8. 認知症予防にNMNは効果がありますか?
NMNは脳内のNAD⁺濃度を上昇させ、神経細胞を保護する可能性が示唆されています。動物実験では認知機能改善が報告されていますが、人間における認知症予防効果は現在研究段階であり、結論はまだ出ていません。

Q9. NMNを飲むだけで若返ることができますか?
NMNは細胞レベルの抗老化作用を持つ物質ですが、「飲むだけで劇的に若返る」ということはありません。NMNは健康的な食事、適度な運動、良質な睡眠などと組み合わせることで、健康寿命をサポートする補助的な役割を担います。

当院での取り組み

NMNはまだ研究途上の分野であり、正しい情報と安全な環境での利用が欠かせません。当院では以下のような体制を整えています。

・医師による丁寧なカウンセリング
健康状態や既往歴を確認し、一人ひとりに合った投与方法・用量をご提案します。

・高品質のNMNを使用
臨床試験で用いられるのと同等レベルの純度を持つNMNを採用し、サプリメントや点滴の形で提供しています。

安全性を重視した投与管理
点滴施術では医師が常駐し、投与中の体調変化に対応できる体制を整えています。

・総合的な健康サポート
NMN単独ではなく、生活習慣改善や他の再生医療との組み合わせも視野に入れ、健康寿命の延伸をトータルでサポートします。

まとめ

NMNは体内でNAD⁺に変換され、エネルギー代謝や老化抑制に関わる重要な分子として注目を集めています。
近年の研究では、

  • インスリン感受性の改善
  • 血糖や血圧など代謝指標の安定化
  • 持久力や筋力の向上
  • 認知機能低下予防の可能性

といった効果が報告されており、糖尿病予備群や高齢者、アスリートにとっても有益な可能性が示されています。

安全性についても、これまでの臨床試験では大きな問題は報告されていません。ただし、長期的な影響はまだ研究段階であり、過剰摂取や品質の不確かな製品には注意が必要です。

当院では、最新の知見に基づいた安全なNMN療法を提供し、患者さまが「若々しく、健やかに年齢を重ねる」ためのお手伝いをしています。気になる方は、まずはご相談ください。

参考文献: 最新のNMN研究から抜粋
1. The Safety and Antiaging Effects of Nicotinamide Mononucleotide in Human Clinical Trials: an Update – PMC
2. Nicotinamide Mononucleotide Is Safely Metabolized and Significantly Reduces Blood Triglyceride Levels in Healthy Individuals – PMC
3. Chronic nicotinamide mononucleotide supplementation elevates blood nicotinamide adenine dinucleotide levels and alters muscle function in healthy older men | npj Aging
4. Nicotinamide mononucleotide increases muscle insulin sensitivity in prediabetic women – PubMed
5. Frontiers | A Multicentre, Randomised, Double Blind, Parallel Design, Placebo Controlled Study to Evaluate the Efficacy and Safety of Uthever (NMN Supplement), an Orally Administered Supplementation in Middle Aged and Older Adults)
6. A Current List of Completed NMN Human Trials – Renue By Science
7. Nicotinamide mononucleotide supplementation enhances aerobic capacity in amateur runners: a randomized, double-blind study | Journal of the International Society of Sports Nutrition | Full Text
8. Chronic nicotinamide mononucleotide supplementation elevates blood nicotinamide adenine dinucleotide levels and alters muscle function in healthy older men | npj Aging
9. Effect of oral administration of nicotinamide mononucleotide on clinical parameters and nicotinamide metabolite levels in healthy Japanese men – PubMed
10. Safety evaluation of β-nicotinamide mononucleotide oral administration in healthy adult men and women | Scientific Reports
11. Separating substance from nonsense in a study on NMN supplements

                           

執筆者

若林雄一

若林 雄一

セルグランクリニック 院長

医学博士
アメリカ再生医療学会専門医
抗加齢学会専門医
放射線診断専門医
核医学専門医

【略歴】                                        
アメリカ再生医療学会認定専門医資格を有し、神戸大学病院やアメリカ国立衛生研究所(NIH)で培った経験を基に、患者様一人ひとりのニーズに応じたオーダーメイド医療を提供しています。