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COLUMN
2025.12.23
コラム

エクソソームで慢性疼痛を改善する方法〜メカニズムと治療の流れを専門医が解説

慢性疼痛に悩む方へ──エクソソーム治療という新しい選択肢

3ヶ月以上続く痛み。

湿布を貼っても、痛み止めを飲んでも、なかなか改善しない……そんな慢性的な痛みに悩まされている方は少なくありません。

腰痛、椎間板ヘルニア由来の坐骨神経痛、神経障害性疼痛、関節リウマチの関節痛など、その原因はさまざまです。従来の治療では、痛みを一時的に抑える「対症療法」が中心でした。

しかし近年、幹細胞培養上清液に含まれる「エクソソーム」を用いた再生医療が、慢性疼痛の改善に期待できる治療法として注目を集めています。

この記事では、アメリカ再生医療学会専門医である私が、エクソソームによる慢性疼痛治療のメカニズムから実際の治療の流れまで、わかりやすく解説します。

慢性疼痛とは何か──3ヶ月以上続く痛みの正体

慢性疼痛は、「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み」と定義されます。

具体的には、3ヶ月以上続く持続的な痛みを指します。急性期の痛みとは異なり、組織の損傷が治癒した後も痛みが残り続けることが特徴です。

全身に倦怠感があったり、痺れるような痛みがあったり、日常生活に大きな支障をきたすケースも少なくありません。

慢性疼痛の主な原因

慢性疼痛は主に以下の3つの要因から生じます。

  • 神経の損傷や炎症──神経そのものが傷つくことで、痛みの信号が過剰に伝わり続けます
  • 中枢神経系の変化──脳や脊髄での痛みの処理システムが変化し、痛みを感じやすくなります
  • 慢性的な炎症──組織の炎症が長期化し、痛みを引き起こす物質が持続的に放出されます

これらの要因が複雑に絡み合うことで、痛みが慢性化していきます。

従来の治療法の限界

湿布や鎮痛剤、塗り薬などは、痛みを一時的に和らげることはできても、痛みの根本的な問題を解決することはできません。

また、手術や侵襲的な治療方法にできることも非常に限られています。だからこそ、体の中から原因にアプローチする再生医療への期待が高まっているのです。

エクソソームとは──細胞が放出する「治癒のメッセンジャー」

エクソソームとは、細胞が分泌する直径約30〜150ナノメートルの極小の「細胞外小胞」です。

細胞同士が情報をやり取りするための「小さなカプセル」のようなもので、その中にはタンパク質、マイクロRNA、メッセンジャーRNAなどが含まれています。

これらの成分が、傷ついた細胞や老化した細胞に直接届き、細胞の働きを調整する情報を伝えるのです。

幹細胞培養上清液に含まれるエクソソーム

幹細胞培養上清液とは、幹細胞を培養した際に分泌される有効成分が詰まった液体のことです。

幹細胞そのものではなく、幹細胞が出す「治癒力の素」を集めたものとお考えください。この上清液には、豊富なサイトカイン(成長因子)エクソソームが含まれています。

サイトカインとエクソソームの違い

サイトカインは「体への指令書」のようなもので、傷ついた細胞に「修復しなさい」「新しい血管を作りなさい」「炎症を抑えなさい」といった指示を出します。

一方、エクソソームは「治癒情報が入った宅配便」のようなものです。サイトカインよりもさらに深く細胞内に働きかけることができ、より直接的に細胞の機能を調整します。

エクソソームが慢性疼痛を改善するメカニズム

では、エクソソームはどのようにして慢性疼痛を改善するのでしょうか。そのメカニズムは、大きく分けて3つあります。

1. 炎症を鎮める抗炎症作用

慢性疼痛の多くは、長期化した炎症が原因です。

幹細胞培養上清液に含まれるエクソソームは、炎症を引き起こす物質の産生を減少させ、逆に炎症を抑える物質の産生を増加させます。

動物実験では、神経損傷モデルの脊髄において、エクソソーム投与後に炎症性サイトカインの産生が減少し、抗炎症性サイトカインの産生が増加することが確認されています。

2. 神経の修復を促進する作用

エクソソームには、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)など、神経の成長や生存を助ける因子が多数含まれています。

これらの因子が神経細胞の生存を支え、神経周囲の炎症環境を調整し、神経機能の回復を支える可能性を促すことで、痛みの原因そのものに働きかけます。

3. 免疫細胞の暴走を抑える作用

神経因性疼痛では、神経系の免疫細胞であるミクログリアが活性化し、炎症性の物質を放出して痛みを悪化させます。

エクソソームを投与すると、損傷後に暴走したミクログリアを元の安静な状態に戻し、脊髄の炎症反応を減弱させることが動物研究で示されています。

さらに、エクソソームは受け取った細胞内で不要なたんぱく質を処理・分解する過程(オートファジー)を活性化し、その結果ミクログリアの炎症誘発活性を抑制することも報告されています。

このように、エクソソームは「炎症を鎮めて修復を促す」という二重の作用機序で、慢性疼痛を和らげる可能性があるのです。

出典

CELL GRAND CLINIC「幹細胞上清液(エクソソーム)による慢性疼痛緩和」

エクソソーム治療の実際の効果──エビデンスと臨床データ

理論だけでなく、実際の効果はどうなのでしょうか。

動物実験での有効性

動物実験の段階では、神経因性疼痛に対するエクソソームの有効性は繰り返し示されています。

坐骨神経の損傷や糖尿病による末梢神経障害を起こした動物モデルでは、幹細胞培養上清液を静脈投与することで、痛みに対する過敏な反応が明らかに軽減しました。動物モデルにおいて、疼痛行動の改善が報告されています。

ヒトでの臨床研究

ヒトでの臨床研究も少しずつ成果が報告されています。

日本からの報告では、慢性の関節痛や筋肉痛に悩む患者16名に対し、脂肪由来幹細胞の上清液を患部に注射し経過を追ったところ、注射後わずか15分で痛みが軽減し始め、その効果は1週間から4週間後まで持続しました。

患者が自己評価した痛みの数値は、初回の治療前に比べ治療後に有意に低下し、最も痛みが強い時の程度も4週間後には明らかに改善していました。

こうした研究からは、エクソソーム治療によって神経因性疼痛が和らぐ可能性が示されています。

出典

CELL GRAND CLINIC「幹細胞上清液(エクソソーム)による慢性疼痛緩和」

CELL GRAND CLINICでのエクソソーム治療の特徴

当院では、複数由来の幹細胞培養上清液から抽出されたエクソソームを取り扱っています。最高品質のエクソソーム含有量

当院オリジナルの幹細胞培養上清液は、最大1本当たり1500億(歯髄)のエクソソームと多彩な成長因子などが含まれる最高品質を実現しています。

細胞自体を含まないため、拒絶反応のリスクが極めて低く、炎症を和らげ、痛みを緩和します。

選べる幹細胞由来

幹細胞培養上清液は、採取する場所によって3つの種類があります。

  • 臍帯血由来──赤ちゃんが生まれた時のへその緒の血液から採取。若くて元気な幹細胞が豊富で、高い増殖能力を持っています
  • 乳歯歯髄由来──子どもの抜けた乳歯の中心部分から採取。非常に活発で、神経系への働きかけが期待されています
  • 脂肪由来──成人の脂肪組織から採取。比較的採取しやすく、安定した品質で提供できます

痛みということでは、乳歯歯髄由来を推奨します。

当院では全種類の由来の幹細胞培養上清液を取り扱っており、専門医によるカウンセリングのもと、症状やご要望にあわせて提案します。

他の治療との併用も可能

エクソソーム治療は、薬物療法やリハビリとの併用も可能です。

エクソソーム治療は、細胞を用いない補助的治療であり、鎮痛薬や代謝改善薬、理学療法・神経モビライゼーション、栄養最適化を組み合わせると相乗効果が期待できます。

エクソソーム治療の流れ──初診から投与まで

実際の治療はどのように進むのでしょうか。

STEP 1:初診・カウンセリング

まず、専門医による詳しいカウンセリングを行います。

現在の症状、痛みの経過、これまでの治療歴などを丁寧にお伺いし、エクソソーム治療が適しているかを判断します。

STEP 2:血液検査・診察

血液検査により、現在の体の状態を詳しく評価します。炎症マーカーや免疫状態などを確認し、最適な治療プランを立てます。

STEP 3:投与方法の決定

エクソソームの投与方法には、静脈点滴(全身投与)局所注入の2つがあります。

  • 静脈点滴──全身を巡る血流に乗せて、炎症や損傷部位に届ける方法。全身に広がる慢性疼痛に効果的です
  • 局所注入──患部の周囲や神経の近くに直接投与する方法。より集中的な修復が期待できます

症状の分布や原因に応じて、最適なルートを選択します。

STEP 4:エクソソーム投与

点滴の場合は約30分、局所注入の場合は約15分で投与が完了します。

投与後は、軽い発熱や倦怠感、注入部位の違和感が生じることがまれにありますが、いずれも一時的で自然に改善することが多いです。

STEP 5:経過観察

早い方で当日から1週間以内に疼痛・しびれの軽減がみられます。

神経症状は変化の評価に時間を要するためため、経時的なフォローで評価します。初期は1〜2回)、その後は維持としてエクソソーム治療を継続するか、他治療と組み合わせるかを提案することが多く、症状と反応性に応じて医師と最適プランを決めます。

エクソソーム治療の安全性とリスク

どんな治療にも、リスクはつきものです。

高い安全性

エクソソーム治療は、これまでの臨床データから安全性が高い治療とされています。

幹細胞培養上清液には幹細胞そのものが含まれないため、拒絶反応の報告はほぼありません。

起こりうる副作用

主な副作用としては、投与後の一過性の微熱・倦怠感・注入部の違和感が主体で、重篤な合併症は稀です。

無菌管理・適切な選別や培養が行われる施設を選ぶことが重要です。

よくあるご質問──エクソソーム治療について

患者様からよくいただく質問にお答えします。

Q1. 効果はいつ頃から実感できますか?

早い方で当日から1週間以内に数週間から疼痛・しびれの軽減がみられます。

エクソソーム治療は、神経や組織そのものを再生させる治療ではなく、
炎症や細胞周囲の環境を整えることを目的とした治療です。
そのため、即効性よりも経時的な変化をフォローしながら判断します。

Q2. 薬物療法やリハビリと併用できますか?

可能です。

エクソソーム治療は細胞を用いない補助的治療であり、鎮痛薬、代謝改善薬、理学療法、神経モビライゼーション、栄養管理などと併用することで症状改善をサポートすることが期待されます。

Q3. 高齢でも治療を受けられますか?

全身状態が安定していれば高齢の方でも検討可能です。
エクソソーム治療は細胞移植を伴わないため、身体的負担が比較的少ない治療とされています。

ただし、癌の既往がある方や妊娠中の方などの場合は、医師が個別に適応を判断します。

Q4. 治療回数の目安は?

症状や反応性によって異なりますが、初期は1〜2回で経過を評価するケースが一般的です。

その後は、症状の安定度や目的に応じて、エクソソーム治療を継続するか、他の治療法を組み合わせるかを医師と相談して決定します。

Q5. 再発・増悪の予防にも役立ちますか?

炎症や細胞環境の改善を通じて、症状の再増悪を抑制する補助的役割が期待される場合があります。

ただし、血糖管理、体重、姿勢、身体負荷、生活習慣、服薬状況など原因因子への対応が不可欠であり、 エクソソーム治療単独での予防効果を保証するものではありません。

まとめ──慢性疼痛に悩むあなたへ

慢性疼痛は、単なる「痛み」ではありません。それは、日常生活を奪い、心の健康をも蝕む、深刻な問題です。

従来の治療法では限界があり、「もう治らない」と諦めてしまう方も少なくありません。しかし、再生医療分野で研究が進むエクソソームを用いた治療は、炎症や細胞周囲の環境に働きかけることで、慢性疼痛に対する症状緩和を補助的に支える可能性が示唆されている治療法です。

炎症を鎮め、神経を修復し、免疫の暴走を抑える──この三位一体の作用により、これまで改善が難しかった慢性疼痛にも、新たな希望が見えてきています。

大阪・心斎橋の再生医療クリニック「CELL GRAND CLINIC」は、再生医療等安全性確保法に基づき、厚生労働省へ第二種・三種の再生医療等提供計画を届出し、特定認定再生医療等委員会の審査を経たうえで治療を提供する医療機関です(計画番号:PB5240089ほか/PC5250007ほか)。

当院では幹細胞治療を中心に、PRP・エクソソーム(幹細胞培養上清液)・線維芽細胞・NK細胞治療など幅広い再生医療に対応し、症状・既往歴・生活背景をふまえた個別の治療プランをご提案します。幹細胞再生治療では、投与日に合わせた培養と品質管理(生存率・表面抗原の確認等)を重視し、細胞品質の「見える化」に取り組んでいます。

治療の適応、期待できる効果と限界、リスク、費用はカウンセリングで丁寧にご説明します。詳しくはCELL GRAND CLINIC公式サイトをご覧ください。

※本コラムは一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を代替するものではありません。治療の適応や内容は、診察・検査結果等を踏まえて医師が判断します。

                           

【著者情報】

若林雄一                                    

若林 雄一

                                   

セルグランクリニック 院長/医学博士

                                   

【専門分野】
再生医療 幹細胞治療 坑加齢医療 予防医療 美容エイジングケア

【所属学会・資格】
アメリカ再生医療学会専門医 日本坑加齢医学会専門医 放射線診断専門医  核医学専門医 日本再生医療学会員 日本認知症学会員 他                                        

【略歴】                                        
神戸大学医学部卒業、神戸大学大学院修了(医学博士)。近畿大学医学部での臨床・教育経験を経て、米国国立衛生研究所(NIH)にて研究に従事。 神経疾患領域の研究を背景に、再生医療・抗加齢医療・予防医療を専門とする。 Pfizer社との共同研究による「PDE4Bに特異的なPET薬剤の世界初のヒト使用(First-in-human)」を第一著者として報告するなど、国際誌に多数の業績を有する。 科学的根拠と安全性・品質管理を重視し、患者一人ひとりの「健康寿命」を延ばす医療を目指している。