関節リウマチ・全身性エリテマトーデス(SLE)・炎症性腸疾患など、自己免疫疾患は「体の免疫が自分自身を攻撃してしまう」難治性疾患のグループです。患者さまから「治し方はないのか」「薬を減らせないか」というご相談を多くいただきます。
本記事では、自己免疫疾患の原因・主な疾患・従来治療の限界と、脂肪由来幹細胞(ADSC)を活用した最新の免疫調整アプローチについて、最新の査読論文をもとに医師が解説します。
自己免疫疾患とは?
通常、免疫系は細菌・ウイルスなどの「外敵」を認識して攻撃し、自己の細胞には反応しない「免疫寛容」の仕組みを持っています。自己免疫疾患とは、この免疫寛容が崩れ、自己の組織・臓器を「敵」として誤認識して攻撃してしまう疾患群です。
発症の原因と日本での増加傾向
自己免疫疾患の根本原因は完全には解明されていませんが、以下の要因の複合が示唆されています。
- 遺伝的素因(HLA型などの免疫関連遺伝子の多型)
- 腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)による腸管免疫の調節異常
- 環境要因(感染症・化学物質・ストレス・日光不足)
- ホルモン変動(女性に多い理由として女性ホルモンの影響)
日本でも関節リウマチの患者数は70万人以上、IBD患者数は近年急増しており、自己免疫疾患は現代の重要な医療課題となっています。

代表的な自己免疫疾患の症状とその特徴
自己免疫疾患には多くの種類があり、それぞれが特有の症状を示します。以下に代表的な自己免疫疾患とその主な症状を示します。
関節リウマチ
・手や足の関節の腫れや痛み、関節の変形、朝のこわばり感など。
全身性エリテマトーデス(SLE)
・発熱、関節痛、皮膚の赤い発疹(蝶形紅斑)、腎臓障害、倦怠感など。
橋本病(慢性甲状腺炎)
・甲状腺機能の低下による倦怠感、体重増加、冷え性、肌の乾燥、脱毛など。
シェーグレン症候群
・目や口の乾燥(ドライアイ・ドライマウス)、唾液や涙の分泌低下、疲労感、関節痛など。
多発性硬化症(MS)
・視力障害、感覚異常、筋力低下、歩行困難、めまい、倦怠感など神経症状が中心。
クローン病
・慢性的な下痢、腹痛、体重減少、貧血など消化管を中心とした症状が特徴。
潰瘍性大腸炎
・血便、下痢、腹痛、体重減少、全身の倦怠感がみられ、大腸の慢性的な炎症が起きる。
これら自己免疫疾患は、症状が慢性的かつ進行性であることが多く、生活の質(QOL)を著しく低下させる要因となります。また、同じ疾患でも症状の出方や重症度には個人差があるため、患者一人ひとりに合わせた適切な治療やケアが重要になってきます。

自己免疫疾患治療の標準薬物治療
現在の標準治療は「免疫反応を抑える」アプローチが中心です。症状の緩和・進行抑制において一定の効果がある一方、長期使用による副作用や「根本的な治癒」には至らない課題があります。
【従来治療の効果と主な問題点】
| 治療法 | 効果 | 主な問題点・副作用 |
| ステロイド(副腎皮質ホルモン) | 炎症・免疫反応を広く抑制 | 骨粗鬆症・感染症・血糖上昇 |
| 非ステロイド系免疫抑制剤 | 特定の免疫細胞を標的に抑制 | 肝機能障害・感染症・発がんリスク |
| 生物学的製剤(TNF阻害薬等) | 特定のサイトカインを選択的に阻害 | 高額費用・感染症・注射部位反応 |
「薬を減らしたい」患者さまの声
ステロイドや免疫抑制剤の長期使用は、感染症リスクの上昇・骨粗鬆症・肝機能障害などの深刻な副作用を伴います。生物学的製剤は効果的ですが、高額であり、長期の安全性に関する懸念もあります。
多くの患者さまが「できれば薬を減らしたい」「副作用が心配」という思いを抱えている現実があります。このような方々に対して、免疫を根本から「整える」アプローチとして、幹細胞治療が注目されています。
再生医療が自己免疫疾患に期待される作用
再生医療が免疫の根本改善に働きかける仕組み
再生医療における治療の鍵は、「幹細胞」の持つ特殊な性質にあります。幹細胞は体内のあらゆる細胞に分化する能力を持ち、損傷した組織を修復する働きを持つとともに、免疫システムを調整する能力を持っています。
自己免疫疾患に対する再生医療では、患者自身の体から採取した幹細胞を特殊な方法で培養し、患者の体内に再び投与します。投与された幹細胞は、全身を巡り免疫細胞の活動を調整する物質を分泌し、自己免疫反応を引き起こしている異常な免疫応答を鎮静化する働きを発揮すると考えられています。以下が期待される主な効果です。
根本的な免疫バランスの調整
再生医療に使われる幹細胞には免疫調整作用があり、免疫細胞の暴走を抑制し、免疫バランスの正常化が期待できる。
炎症抑制効果
幹細胞が炎症を抑える物質を分泌するため、自己免疫疾患に伴う慢性炎症を根本から軽減する可能性がある。
組織修復と再生能力
損傷を受けた組織の修復や再生を促すことで、病気に伴う臓器や組織のダメージを改善できる可能性がある。
副作用や薬剤負担の軽減
薬剤使用量を減らせる可能性があるため、長期間の薬剤投与に伴う副作用や合併症のリスクを低下させることが期待できる。
長期的な安定性の確保
一時的な症状緩和ではなく、細胞レベルでの免疫系の改善を行うため、長期的な病状安定が望める。
これらの理由から、再生医療は自己免疫疾患の治療概念を根本から変える可能性を秘めています。

再生医療が自己免疫疾患にもたらすメリットとは?―「抑える」から「治す」時代へ
幹細胞治療とステロイド治療の違い
ステロイドは、炎症や免疫反応を「抑え込む」薬です。関節リウマチや膠原病、アトピー性皮膚炎など、多くの疾患で使用され、確かに症状を素早くコントロールする力を持っています。しかし、ここで重要なのは、ステロイドはあくまで「火事の炎を一時的に抑えている」に過ぎないということです。火元そのものを消しているわけではありません。
一方、幹細胞治療は全く異なるアプローチを取ります。幹細胞は損傷した組織に働きかけ、細胞レベルでの修復・再生を促します。つまり、「火元そのものを修復する」治療なのです。
ステロイド長期使用のリスク
ステロイドを長期間使用すると、以下のような副作用が懸念されます:
- 骨粗鬆症(骨がもろくなる)
- 糖尿病の悪化・発症
- 感染症にかかりやすくなる(免疫抑制)
- 皮膚の菲薄化(皮膚が薄くなる)
- ムーンフェイス(顔が丸くなる)
- 副腎機能の低下
これらの副作用を避けるため、多くの患者様が「薬を減らしたい」「薬に頼らない治療法はないか」と模索されています。
幹細胞治療が選ばれる理由
①自己修復力を活かした治療
自家脂肪由来の幹細胞治療では、ご自身の細胞を使用するため、拒絶反応やアレルギーのリスクが極めて低いのが特徴です。身体に本来備わっている「治す力」を最大限に引き出します。
②炎症の根本原因にアプローチ
幹細胞は炎症部位に集まり、抗炎症作用を発揮するだけでなく、損傷した組織の再生を促進します。これは単に症状を抑えるステロイドとは本質的に異なる作用です。
③薬剤依存からの脱却
幹細胞治療により症状が改善すれば、ステロイドの減量・離脱が期待できます。「一生薬を飲み続けなければならない」という不安から解放される可能性があります。
再生医療による日常生活やQOLへの好影響
自己免疫疾患は慢性的かつ進行性であり、患者さんの日常生活に大きな負担をかけています。関節の痛みや倦怠感、消化器症状、皮膚症状など、病気による身体的な不調はもちろん、治療に伴う薬剤の副作用や頻繁な通院の負担など、精神的なストレスも患者さんにとって深刻な問題です。
再生医療がもたらす根本的な免疫の調整は、これらの問題を大きく改善する可能性があります。慢性的な症状が軽減されることで日常生活の活動性が高まり、趣味や仕事、人間関係など生活全般が豊かになることが期待されます。また、薬剤の使用量が減ることにより副作用や通院頻度が低下し、患者さんの心理的な負担やストレスも軽減するでしょう。
再生医療は病気そのものの進行を抑制するだけでなく、日々の生活の質(QOL)を向上させ、患者さんがより快適で健康的な生活を取り戻すための大きな助けとなる可能性があります。
CELL GRAND CLINICでの幹細胞治療
CELL GRAND CLINICでは、自己脂肪由来幹細胞(ADSC)を用いた再生医療を提供しています。本治療は「再生医療等安全性確保法」に基づき、特定認定再生医療等委員会の審査を経て厚生労働省へ計画書を提出・承認を受けた第2種再生医療として実施しています。
当院の幹細胞治療が選ばれる理由
幹細胞は”生き物”。同じ幹細胞治療でも、細胞の品質によって効果は大きく変わります。当院では「Fresh(生存率95%以上)・Pure(純度99%)・Young(第3継代)」という3つの品質基準をクリアした細胞のみを使用。作り置きは一切せず、患者さまの投与日に合わせて1から培養し、1検体ごとに品質基準保証書を発行することで、細胞品質の「見える化」を徹底しています。
カウンセリングでは、治療の適応・期待できる効果と限界・リスク・費用について丁寧にご説明いたします。まずはお気軽にご相談ください。
▶ 詳しくはCELL GRAND CLINIC公式サイトをご覧ください。

治療の流れ(概要)
- STEP 1:カウンセリング、血液検査・脂肪採取(局所麻酔下・30分程度)
- STEP 2:提携CPC(細胞加工施設)での培養(初回:7週間)
- STEP 3:幹細胞点滴投与(1〜1.5時間、最大2億個)
- STEP 4:フォローアップ
※本治療は保険適用外の自由診療です。料金は診察時にご確認ください。れることが期待されます。この期間中は、患者さんご自身でも生活習慣を整えるなど、治療効果を高める取り組みが推奨されます。

再生医療の安全性とリスク管理について知っておくべきこと
再生医療を受けるにあたって、患者さんが不安に感じることの一つに、安全性やリスクに関することがあるかもしれません。再生医療は自己の幹細胞を用いるため、他人由来の細胞を使う場合と比較して拒絶反応や重篤な副作用のリスクは極めて低いとされています。
細胞採取は局所麻酔を用いて行われるため、患者さんへの身体的負担は最小限です。また、幹細胞の培養は厚生労働省の基準を満たした厳格な管理体制のもとで行われるため、感染症や細胞異常などのリスクも低く抑えられています。
投与後に軽度な副作用(倦怠感、一時的な発熱や投与部位の痛みなど)がみられる場合がありますが、通常は数日以内に自然に軽減します。また、治療施設では緊急時に備えた万全な対応体制が整えられているため、万が一のトラブルが生じた場合でも迅速に対応が可能です。
患者さんが安全に再生医療を受けられるように、事前に十分な説明やカウンセリングを行うクリニックを選ぶことが重要です。患者さん自身が納得したうえで治療を受けることが、安心して治療を進めるために欠かせません。

よくある質問(FAQ)
自己免疫疾患は完治しますか?
多くの自己免疫疾患は完全寛解(症状がなくなる状態)を目指しますが、「根治」が難しい疾患も多いです。幹細胞治療は免疫のバランスを整えることで、症状の軽減・薬の減量・QOLの向上を目指すアプローチです。
自己免疫疾患にはどのような初期症状がありますか?
疾患によりますが、疲労感、微熱、関節痛、肌荒れ、消化不良などの漠然とした症状から始まることが多く、診断まで時間がかかることがあります。気になる症状が続く場合は早めの受診をおすすめします。
再生医療を受けるとすぐに症状が改善しますか?
個人差がありますが、幹細胞治療では投与後1ヵ月ごろから効果を実感する方が多く、約3ヵ月が効果を判断する目安です。
ステロイド剤や免疫抑制剤の服用を完全にやめることは可能ですか?
再生医療により免疫バランスが整うと、薬剤の使用量を減らしたり、場合によっては完全にやめられる可能性もあります。ただし病状や経過には個人差があり、医師と相談しながら慎重に進める必要があります。
自己免疫疾患の治療に年齢制限はありますか?
特に厳格な年齢制限はありませんが、自己免疫疾患の進行が比較的初期~中期である方が、再生医療の効果を最大限に引き出しやすい傾向があります。年齢よりも病状や身体の状態が重要です。
再生医療の幹細胞採取は痛いですか?
幹細胞採取は通常局所麻酔を使用し、短時間で終わります。痛みや負担は比較的軽度で、採取後に軽度の腫れや違和感が出ることもありますが、数日以内に自然に改善します。
再生医療に副作用やリスクはありますか?
患者さん自身の細胞を使うため、重篤な拒絶反応や副作用のリスクは極めて低いとされています。稀に投与直後に軽い倦怠感や微熱などがありますが、数日以内に改善することがほとんどです。
現在服薬中でも受けられますか?
多くの場合は併用可能ですが、服用中のお薬によっては培養・効果に影響が出る場合があります。現在の薬について必ず初診時にお伝えください。
再生医療で他の臓器や疾患にも良い影響はありますか?
幹細胞が分泌する成長因子や抗炎症物質により、全身の免疫バランスや炎症が改善されるため、自己免疫疾患以外の症状(疲労感、慢性的な不調、肌荒れなど)が改善する可能性もあります。
治療費用が高額ですが、支払いの支援はありますか?
医療費控除の対象になるケースもあります。詳しくは税務署のHP参照ください。また、多くのクリニックでは分割払いや医療ローンの利用が可能で、費用負担を軽減する仕組みが用意されています。
まとめ:自己免疫疾患の未来を変える再生医療への期待
免疫異常に悩む方に知ってほしい新しい可能性
自己免疫疾患を患っている方は、長い間症状の管理や生活の制限に苦しんできたかもしれません。従来の薬物治療だけでは症状の進行を完全に止めることは難しく、副作用などの負担も大きいため、将来への不安や絶望感を感じている方も少なくないでしょう。
しかし、医療の進歩に伴い、再生医療という新たな治療の可能性が開けています。再生医療は、細胞の持つ自然な免疫調整作用を利用して、免疫系の異常そのものを根本的に改善することが期待されています。これにより、病気の進行を遅らせたり、症状を大幅に緩和したり、場合によっては薬剤使用を減らすことが可能になるかもしれません。
私たちは、あなたが治療への第一歩を安心して踏み出し、健康で希望に満ちた日々を取り戻せるよう、全力でサポートいたします。自己免疫疾患と向き合う全ての方々に、再生医療という新たな可能性が届くことを願っています。
参考文献
本記事の執筆にあたり、以下の査読済み論文を参照しました。
1. Zaripova LN, et al. Mesenchymal Stem Cells in the Pathogenesis and Therapy of Autoimmune and Autoinflammatory Diseases. Int J Mol Sci. 2023;24(22). PMID:38003230 https://doi.org/10.3390/ijms242216040
2. Huang Y, et al. Immunomodulatory Mechanisms of Mesenchymal Stem Cells and Their Potential Clinical Applications. Int J Mol Sci. 2022;23(17). PMID:36077421 https://doi.org/10.3390/ijms231710023
3. Wang Y, et al. Reciprocal regulation of mesenchymal stem cells and immune responses. Cell Stem Cell. 2022;29(11):1515-1530. PMID:36332569 https://doi.org/10.1016/j.stem.2022.10.001
4. Naji A, et al. Biological functions of mesenchymal stem cells and clinical implications. Cell Mol Life Sci. 2019;76(17):3323-3348. PMID:31055643 https://doi.org/10.1007/s00018-019-03125-1
最終更新日:2026.04.27