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COLUMN
2025.09.10
コラム

ED(勃起不全)の根本治療を目指す幹細胞療法【薬に頼らない最新再生医療】

EDとは?従来治療の限界と新たな選択肢

ED(勃起不全・勃起障害)は、満足な性行為を行うのに十分な勃起を得られない、または維持できない状態を指します。日本では40代男性の約20%、50代で約40%、60代では約60%が何らかのEDを経験しており、決して珍しい症状ではありません。

従来のED治療とその課題

現在最も一般的なED治療は、バイアグラ®やシアリス®などのPDE5阻害薬の服用です。これらの薬は血管を一時的に拡張させて血流を改善しますが、あくまで「その場しのぎ」の対症療法です。
薬の効果が切れれば元の状態に戻ってしまい、根本的な解決にはなりません。
さらに、以下のような患者様では薬物治療の効果が限定的です。

  • 糖尿病性ED:重度の血管・神経障害により薬が効きにくい
  • 前立腺がん術後ED:手術による神経損傷で薬の反応が悪い
  • 心血管疾患がある方:薬の使用自体が制限される場合がある

このような背景から、薬に頼らない根本的な治療法として再生医療が注目されています。

再生医療によるED治療の可能性

再生医療は、損傷した組織や臓器を修復・再生させる最先端の医療技術です。ED治療においては、主に以下の2つのアプローチがあります。

  1. 幹細胞治療:患者様ご自身の脂肪から採取した幹細胞を陰茎に注入
  2. エクソソーム療法:幹細胞が分泌する有効成分を濃縮した上清液を使用

これらの治療は、傷んだ血管や神経を根本から修復することで、自然な勃起機能の回復を目指します。

なぜEDは起きるのか?血管と神経の老化メカニズム

EDを理解するには、正常な勃起のメカニズムを知ることが重要です。勃起は以下のプロセスで起こります。

  1. 性的刺激により脳から神経を通じて信号が送られる
  2. 陰茎の血管が拡張し、海綿体に血液が流入する
  3. 海綿体が血液で満たされ、陰茎が硬くなる
  4. 静脈の流出が制限され、勃起が維持される

EDの主な原因

このプロセスのどこかに問題が生じるとEDが発生します。主な原因は以下の通りです。

血管の問題(血管性ED)

  • 動脈硬化による血流不足
  • 高血圧、糖尿病による血管損傷
  • 加齢による血管の弾力性低下

神経の問題(神経性ED)

  • 前立腺手術による神経損傷
  • 糖尿病性神経障害
  • 脊髄損傷

組織の問題(器質性ED)

  • 海綿体平滑筋の減少
  • 陰茎組織の線維化(硬化)
  • コラーゲン沈着による弾力性の低下

これらの問題は、いわば「陰茎という臓器の老化現象」と言えます。建物に例えると、水道管(血管)が詰まり、電気配線(神経)が切れ、建材(組織)が劣化した状態です。

幹細胞治療がEDを改善する仕組み

幹細胞治療は、患者様ご自身の脂肪組織から採取した間葉系幹細胞(MSC)を陰茎海綿体に直接注入する治療法です。

幹細胞の2つの作用メカニズム

1. 直接的な組織修復作用

注入された幹細胞は、損傷部位で以下の細胞に分化(変化)する可能性があります:

  • 血管内皮細胞:新しい血管を形成
  • 平滑筋細胞:海綿体の弾力性を回復
  • 神経支持細胞:神経の再生を促進

2. パラクライン作用(分泌物による間接的作用)

幹細胞は「生きた薬工場」として、様々な有効成分を分泌します:

  • VEGF(血管内皮増殖因子):新しい血管の形成を促進
  • HGF(肝細胞増殖因子):組織の修復と抗炎症作用
  • BDNF(脳由来神経栄養因子):神経の成長と再生を促進
  • エクソソーム:細胞間の情報伝達を担う微小胞

これらの成分が協調して働くことで、陰茎組織の包括的な修復・再生が期待できます。

治療の流れ

  1. カウンセリング:症状や既往歴の確認
  2. 脂肪採取:局所麻酔下で腹部や太ももから少量の脂肪を吸引
  3. 幹細胞の分離・培養:専門施設で幹細胞を増やす
  4. 陰茎への注入:細い針で海綿体に直接注射(約10分)
  5. 経過観察:定期的な効果確認

エクソソーム療法(幹細胞培養上清液)という選択肢

エクソソーム療法は、幹細胞を培養した際に分泌される上清液を使用する治療法です。細胞そのものは含まれませんが、幹細胞が分泌した有効成分が濃縮されています。

エクソソームとは?

エクソソームは直径50-150ナノメートルの微小な膜小胞で、以下の特徴があります:

  • 細胞間の情報伝達を担う「メッセージカプセル」
  • タンパク質やマイクロRNAなどの修復指令を含有
  • 損傷細胞に取り込まれて治癒を促進

上清液治療のメリット

  1. 手術不要:脂肪採取が不要で身体への負担が少ない
  2. 即座に治療可能:培養期間を待つ必要がない
  3. 繰り返し投与が容易:必要に応じて追加治療が可能
  4. 安全性が高い:細胞を含まないため腫瘍化リスクがない

使用される上清液の種類

  • 臍帯由来:新生児の臍帯から採取した若い幹細胞の上清液
  • 歯髄由来:乳歯や親知らずの歯髄幹細胞の上清液
  • 脂肪由来:成人の脂肪幹細胞の上清液

実際の治療効果は?最新の臨床データ

幹細胞治療・エクソソーム療法の効果については、世界中で研究が進められています。

主要な臨床研究の結果

デンマークの研究(2016年)

  • 対象:前立腺がん術後のED患者17名
  • 方法:自家脂肪由来幹細胞を単回注射
  • 結果:6ヶ月後にIIEF-5スコアが有意に改善、朝勃ちの回復も確認

フランスの研究(2016年)

  • 対象:前立腺手術後の難治性ED患者18名
  • 方法:骨髄由来幹細胞を用量を変えて注射
  • 結果:勃起機能スコアが7.3点→17.4点に改善(30点満点)

ヨルダンの研究(2018年)

  • 対象:糖尿病性ED患者22名
  • 方法:臍帯由来幹細胞を2回注射
  • 結果:12ヶ月後も効果が持続、陰茎血流の改善を確認

日本の研究(2022年)

  • 対象:ED患者38名
  • 方法:歯髄幹細胞上清液を陰茎に注射
  • 結果:3回の治療でIIEF-5スコアが統計的に有意に改善

改善率と効果の持続

現在までの研究を総合すると:

  • 改善率:50-70%の患者で何らかの改善
  • 効果発現:治療後1-3ヶ月で効果を実感
  • 持続期間:6-12ヶ月以上(個人差あり)

安全性と副作用について

再生医療は新しい治療法のため、安全性を心配される方も多いでしょう。しかし、現在までの研究では極めて安全性が高いことが示されています。

報告されている副作用

軽微な副作用(数日で改善)

  • 注射部位の軽い痛みや腫れ
  • 一時的な陰茎の違和感
  • 脂肪採取部の内出血(幹細胞治療の場合)

重篤な副作用

  • 現在までの臨床研究で重篤な副作用の報告はゼロ
  • 5年以上の長期観察でも安全性を確認

安全性が高い理由

  1. 自家細胞使用:自分の細胞なので拒絶反応がない
  2. 間葉系幹細胞の特性:遺伝的に安定で腫瘍化しにくい
  3. 局所投与:全身への影響が最小限
  4. 自然な修復過程:体が本来持つ治癒力を活用

どちらを選ぶ?幹細胞治療VS上清液治療

幹細胞治療と上清液治療には、それぞれ特徴があります。
幹細胞治療は、生きた幹細胞そのものを用いるため、脂肪の採取や6週間ほどの培養期間が必要となります。その分、効果は長期的に持続しやすく、根本的な改善を望む方や中等度から重度のEDでお悩みの方に適しています。ただし、費用は比較的高額です。

一方、上清液治療は幹細胞から分泌されるエクソソームや成長因子を利用する方法で、脂肪採取や培養期間は不要なため、即日治療が可能です。費用も幹細胞治療に比べてリーズナブルで、まずは試してみたい方や軽度〜中等度のEDに向いています。ただし、効果を維持するためには定期的な追加投与が推奨されます。

選択の目安としては、初めて治療を検討される方には負担の少ない上清液治療から始めるのがおすすめです。そのうえで効果を実感できた場合には、より持続的な効果が期待できる幹細胞治療へ移行するとよいでしょう。また、両方を組み合わせることで相乗効果を狙うことも可能です。

よくある質問(FAQ)

Q. 治療に痛みはありますか?
A. 陰茎への注射時に軽い痛みがありますが、極細の針を使用し、局所麻酔も可能なため、多くの方が「思ったより痛くなかった」とおっしゃいます。

Q. 効果はどのくらいで現れますか?
A. 個人差がありますが、早い方で1ヶ月、通常は2-3ヶ月で効果を実感される方が多いです。

Q. 年齢制限はありますか?
A. 特に上限はありませんが、80歳以上の方でも改善例が報告されています。組織の残存能力により効果に差が出る可能性があります。

Q. 保険は適用されますか?
A. 現在は自由診療のため保険適用外です。費用についてはクリニックにお問い合わせください。

Q. PDE5阻害薬と併用できますか?
A. 併用可能です。むしろ相乗効果が期待できる場合もあります。

Q. 糖尿病があっても治療できますか?
A. 可能です。実際に糖尿病性EDの改善例も多く報告されています。

Q. 前立腺手術後でも効果はありますか?
A. 神経温存の程度により差はありますが、改善例が報告されています。

Q. 副作用が心配です
A. 現在までの研究で重篤な副作用は報告されていません。軽い痛みや腫れは数日で改善します。

Q. 効果はどのくらい持続しますか?
A. 個人差がありますが、6-12ヶ月以上持続する例が多いです。必要に応じて追加治療も可能です。

Q. どこで治療を受けられますか?
A. 再生医療の認可を受けた専門クリニックで治療可能です。実績や経験を確認して選択することが大切です。

まとめ:ED治療の新時代へ

ED(勃起不全)に対する幹細胞治療・エクソソーム療法は、従来の薬物療法とは異なり、損傷した組織を根本から修復する画期的な治療法です。

<この治療法の特徴>

  • 薬に頼らない根本的な改善を目指す
  • 自然な勃起機能の回復が期待できる
  • 安全性が高く、重篤な副作用がない
  • 従来治療で効果がなかった方にも希望

 <こんな方におすすめ>

  • PDE5阻害薬の効果が不十分な方
  • 薬の副作用が気になる方
  • 糖尿病や前立腺手術後のED
  • 根本的な改善を望む方
  • 若々しさを取り戻したい方

CELL GRAND CLINICでは、最新の再生医療技術を用いたED治療を提供しています。経験豊富な専門医が、患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な治療プランをご提案いたします。
「もう歳だから」と諦める必要はありません。再生医療という新しい選択肢で、充実した人生を取り戻しませんか。まずはカウンセリングで、お気軽にご相談ください。

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執筆者

若林雄一

若林 雄一

セルグランクリニック 院長

医学博士
アメリカ再生医療学会専門医
抗加齢学会専門医
放射線診断専門医
核医学専門医

【略歴】                                        
アメリカ再生医療学会認定専門医資格を有し、神戸大学病院やアメリカ国立衛生研究所(NIH)で培った経験を基に、患者様一人ひとりのニーズに応じたオーダーメイド医療を提供しています。