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COLUMN
2025.09.01
コラム

脂肪由来幹細胞治療での急変事故(東京)について

はじめに 再生医療の発展により、自己脂肪由来幹細胞を用いた治療が注目を集めています。 しかし、2025年8月29日、東京のクリニックにて、残念な死亡事故がおこりました。 再生医療中の女性 容体急変し死亡 クリニックに緊急命令」<NHK NEWS WEB> 「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について」<厚生労働省> 本コラムでは、点滴投与中の急変・心停止という最も深刻なリスクについて、その原因と当院の予防対策について詳しくご説明いたします。

今回の事故のポイント

  • 再生医療の治療を受けた外国籍の女性がアナフィラキシーショックで死亡(報道)
  • 幹細胞の投与中に急変し、急速に心停止(厚生労働省発表)
  • 原因は「アナフィラキシーショック」ではないかと言われていますが、詳細な原因はいまだ不明です

点滴投与中の急変・心停止の主な原因

アナフィラキシー反応 培養時に使用される牛胎児血清(FBS)や抗生物質、保存液中の成分に対するアレルギー反応により、重篤なアナフィラキシーショックが発生することがあります。血圧の急激な低下、気道浮腫による呼吸困難が生じ、適切な処置が遅れると心停止のリスクが高まります。 肺塞栓症(肺毛細血管塞栓) 幹細胞の凝集塊による肺の微小血管閉塞です。 脂肪由来幹細胞は比較的大きな細胞であり、培養過程で細胞同士が凝集しやすい性質があります。 これらの細胞塊が肺の毛細血管を詰まらせると、急激な呼吸困難や血圧低下を引き起こし、最悪の場合、心停止に至る可能性があります。 細菌感染による敗血症性ショック 無菌操作が不十分な場合、培養過程で細菌汚染が生じる可能性があります。汚染された細胞製剤を投与すると、急激に敗血症が進行し、多臓器不全から心停止に至ることがあります。

当クリニックの包括的な安全対策

細胞処理技術の最適化 当院では、細胞凝集を防ぐための特殊なフィルトレーションシステムを導入しています。 投与前に細胞懸濁液を段階的にフィルター処理することで、危険な細胞塊の除去を徹底しています。 無血清培養システムの採用 アレルギーリスクを最小限に抑えるため、当院では動物由来成分を含まない無血清培地や患者様ご自身の血液での培養システムを確立しています。 これにより、FBSに起因するアナフィラキシーのリスクを大幅に低減しています。 厳格な無菌管理体制 細胞処理施設(CPC: Cell Processi ng Center)は、クラス100のクリーンルーム環境下で運営されています。 全工程において二重の無菌試験を実施し、エンドトキシン測定も行うことで、感染リスクを徹底的に排除しています。 投与プロトコル 投与数が1億セルの時は60分、2億セルの時は90分かけてゆっくり投与します。投与速度をゆるめることで急激な循環動態の変化、アレルギーを防いでいます。 10分おきに幹細胞の凝集が沈殿しないように攪拌とバイタルサインを慎重にモニタリングしながら段階的に投与量を増やしていきます。 救急対応体制の完備 万が一の急変に備え、当院では以下の体制を整えています。
  • 心電図、血圧、酸素飽和度の連続モニタリング
  • 救急カート(除細動器、気管挿管セット、救急薬剤)の常備
  • 救急医によるスタッフ教育研修
  • 近隣高次医療機関(富永病院、おおさか警察病院)との連携体制
  • スタッフの定期的な救急蘇生トレーニング
  • 投与前スクリーニングの徹底
  • 患者様の既往歴、アレルギー歴を詳細に確認しています。
透明性のある情報提供 当院では、治療のメリットだけでなく、考えられるリスクについても包み隠さずご説明しています。 インフォームドコンセントの過程で、急変の可能性とその対策について十分な時間をかけて説明し、患者様の不安や疑問に真摯にお答えしています。

受診前チェック

今回は大変痛ましい死亡事故が発生してしまいました。 しかし、再生医療は希望の治療であることは間違いありません。 今回の事故では該当クリニックの管理体制や運営に問題があったことに起因していますので、そのことで再生医療自体を否定していただきたくないと思っております。 これは飲食店の食中毒と同じで、料理(=治療)が悪いのではなく、仕入れ・保管・加熱/衛生管理・責任者不在といった管理不備が事故を招きます。 幹細胞も“生き物”です。温度管理・無菌管理・工程と記録・常勤の責任医の実在が揃っているかが安全の分かれ目です。 以下は、再生医療のクリニックを選定するうえで、ぜひ患者さまにチェックしていただきたい項目です。 【最重要ポイント】 ・常勤医師の“実在”確認 ・公式HPに常勤医師の氏名・顔写真・略歴・担当曜日が明記されているか。 ・初診・投与説明・合併症対応をその常勤医師が担うか(実際に面談できるか)。 ・「監修医」「非常勤医師の羅列」「名前貸し」のみで診療責任者が不明なら見送り。 <一般社団法人が運営の場合は必ず徹底> ・法人の肩書ではなく、医療法上の管理医師(常勤)が誰か、勤務実態(週の在院日、在院時間)が確認できるか。 ・相談窓口・同意取得・投与立会いの最終責任医が明確か。ここが曖昧なら受診しない。 【計画番号と専門性の整合】 ・公開されている再生医療等提供計画(計画番号)が提供内容と一致しているか。 ・計画番号が少ないクリニックは要注意 ・担当医の経歴や資格に再生医療に関する信頼できる実績があるかチェック 【救急対応と情報公開】 ・モニタリング、救急対応、連携病院、スタッフ訓練の実施状況が明示されているか。 ・ベネフィットだけでなくリスクと限界を口頭・文書で説明し、質問に正面から回答するか。 【NGクリニックのまとめ】 ・常勤医の記載なし ・管理医師が誰か不明(※一般社団法人で特に要注意) ・リスク説明が薄い ・過剰な広告実施 まとめ 自己脂肪由来幹細胞治療は、適切に実施されれば安全性の高い治療法です。しかし、「絶対に安全」な医療行為は存在しません。 当院では、起こりうるリスクを正しく認識し、それに対する万全の対策を講じることで、患者様に安心して治療を受けていただける環境を提供しています。 患者様におかれましては、再生医療を検討される際の「クリニック選び」と「幹細胞がどこで培養されているか」にご注意ください。 今回の事故において、緊急命令を受けたのは、東京都中央区の「ティーエスクリニック」と埼玉県坂戸市の「コージンバイオ株式会社埼玉細胞加工センター」です。 クリニックだけではなく細胞加工センターについても製造停止させているところがポイントです。 再生医療で使用する細胞の培養には、大きく分けて「クリニック内で細胞を培養する方法」と「外部の専門施設に委託して細胞を培養する方法」の2パターンがあります。 こちらについてはnote記事でまとめておりますので、ぜひご覧ください。 再生医療と歩む【人生100年時代】(note記事) 再生医療の恩恵を安全に享受していただくため、私たちは最新の知見を取り入れながら、安全管理体制の継続的な改善に努めています。 治療をご検討の方は、どうぞお気軽にご相談ください。専門スタッフが詳しくご説明させていただきます。 ※本コラムは医学的な情報提供を目的としたものです。実際の治療については、必ず医師による診察を受け、個別の状況に応じた判断が必要です。

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最終更新日:2026.03.05

                           

【監修医師】

若林雄一                                    

若林 雄一

                                   

セルグランクリニック院長/医師/医学博士

                                   

【専門分野】
再生医療 幹細胞治療 抗加齢医療 予防医療 美容エイジングケア 放射線医学 

【所属学会・資格】
アメリカ再生医療学会(AARM)専門医/日本抗加齢医学会 専門医/放射線診断専門医/核医学専門医/日本再生医療学会 会員/日本認知症学会 会員                                        

【臨床実績】幹細胞治療 累計3,000件以上(変形性膝関節症・糖尿病・慢性疼痛・美容エイジングケア等)

【略歴】                                        
神戸大学医学部卒業、神戸大学大学院修了(医学博士)。米国国立衛生研究所(NIH)にて研究に従事。近畿大学医学部講師を経てセルグランクリニック 院長就任

【著書・メディア掲載】
著書:『世界一簡単な再生医療の基礎知識』/米国経済誌「ウォール・ストリート・ジャーナル」掲載 /KBS京都テレビ 出演 /国際学術誌に多数の論文を発表 

【監修者としての方針】
本コラムの医学的内容は、再生医療等安全性確保法に基づき厚生労働省へ第二種・三種 再生医療等提供計画を届出済(計画番号:PB5240089ほか)の当院院長が監修しています。科学的根拠(エビデンス)と安全性を重視し、正確でわかりやすい情報発信を心がけています。