アンチエイジングとは?
年齢を重ねるにつれて、肌のしわやたるみ、体力の低下、生活習慣病のリスク上昇など、誰にでも老化のサインが現れます。アンチエイジングとは、こうした加齢による変化をできるだけ遅らせ、健康で若々しく過ごすための取り組みのことを指します。単に「見た目を若く保つ」ことだけではなく、健康寿命(自立して健康に過ごせる期間)を延ばすことが大きな目的です。
近年では、老化そのものを科学的にとらえ直す動きも広がっています。日本抗加齢医学会では、老化を次の2つに分けて説明しています。
① 正常な範囲内で起こる老化(加齢に伴って自然に進むもの)
② 病的な老化(疾患としてとらえることができ、予防や治療の対象となるもの)
この考え方に基づくと、病的な老化は生活習慣の改善や医療介入によって進行を防ぎ、健康寿命を延ばすことが可能になります。つまり、アンチエイジングは「見た目」だけではなく、「病気を防ぐための医学的アプローチ」という側面も持っているのです。

老化は医学的にどう分類されるのか
国際的な病気の基準である 国際疾病分類(ICD) では、老化も明確に位置づけられています。
ICD-10:コードR54で「老衰(Senility)」として分類
ICD-11(2022年〜):「加齢関連」「老年期」を定義し、加齢に伴う能力低下を医学的に捉えています。
これらの分類は、老化そのものを「自然現象」ではなく、疾患や治療の対象になり得るものとして考える国際的な流れを反映しています。
アンチエイジングは美容だけではない
老化を抑える取り組みは、しわやたるみといった美容面の改善にとどまりません。動脈硬化・糖尿病・認知症といった生活習慣病や加齢関連疾患の予防につながることが大きなポイントです。
加齢によって進む「慢性炎症」や「細胞ダメージ」が病気のリスクを高めることが分かっており、アンチエイジングはその流れを食い止める一助となります。つまり、アンチエイジングは「美しさを保つためのケア」から「未来の健康を守るための医学的アプローチ」へと進化しているのです。
幹細胞治療によるエイジングケアが注目される理由
アンチエイジングの方法には、食事・運動・サプリメントなどの生活習慣改善から、美容医療までさまざまな手段があります。その中で近年とくに注目されているのが、幹細胞治療を活用した再生医療です。
幹細胞は「さまざまな細胞に分化できる力」や「傷ついた組織を修復する力」を持つ細胞で、もともと私たちの体内に存在しています。若い頃は活発に働き、ケガの治癒や新陳代謝の維持を支えていますが、加齢とともに数も機能も低下していきます。その結果、傷の治りが遅くなり、肌や臓器の再生力も衰えてしまうのです。
この課題に対して、体外から幹細胞やその働きを補う物質を取り入れることで、老化の進行を抑えられるのではないかと考えられています。実際に幹細胞を用いた再生医療は、整形外科領域や免疫疾患などさまざまな分野で研究が進んでおり、一部は臨床現場で実用化されています。そして近年では、全身的な若返りをめざした応用が盛んに行われています。
従来の美容医療(ヒアルロン酸注射、ボトックス、レーザー治療など)が「局所的」かつ「一時的」な効果を狙うのに対し、幹細胞治療は細胞レベルで全身の機能を回復させることを目指す点で画期的です。根本的なエイジングケアとしての可能性が高く、多くの注目を集めている理由もここにあります。

幹細胞療法とは?
幹細胞治療にも色々な方法がありますが、なかでも全身へアプローチできるのが幹細胞点滴療法(幹細胞の点滴による投与)です。点滴療法では、培養した幹細胞やその培養上清液(※幹細胞を培養した液体中に幹細胞から分泌された有効成分が含まれるもの)を、静脈から点滴で体内に戻します。点滴によって有効成分が血液に乗って全身を巡り、各組織に届けられるため、身体全体の若返り効果が期待できます。
主な幹細胞治療の種類
① 自己脂肪由来幹細胞
- 自分のお腹などから脂肪を採取して幹細胞を培養し、点滴で戻す方法
- 自分の細胞を使うため拒絶反応のリスクが少ない
- 「再生医療等安全性確保法」に基づき、厚生労働省への届け出が必要な厳格な治療
② 幹細胞上清液療法
- 幹細胞を培養する際に分泌される成長因子やエクソソームなどを含む液体を利用
- 細胞本体を含まないため、安全性が高い
- 他家由来の幹細胞(例:乳歯歯髄・臍帯由来)も使用可能
- 効率的かつ応用範囲の広い治療として注目されている
当クリニックでも複数の種類の幹細胞治療を提供しています。
自己脂肪由来幹細胞は、ご自身の脂肪組織(お腹など)から採取した幹細胞を培養して点滴する方法です。自分自身の細胞を使うため拒絶反応の心配が少ないメリットがあります。この治療は再生医療安全確保法という法律で厚生省への届け出が必要で厳格に取り締まりがされています。
また、最近は幹細胞そのものではなく、幹細胞を培養したときにできる幹細胞上清液(成長因子などのサイトカインやエクソソームなど幹細胞の分泌成分が豊富な液体)だけを点滴する方法も注目されています。
幹細胞上清液には細胞本体は含まれませんが、幹細胞が出す成長因子などのサイトカインやエクソソームなど幹細胞の分泌成分を利用できるため、安全性が高く効率的な治療として期待されています。こちらの治療では、細胞本体は含まれませんので使用する幹細胞がご自身の脂肪に限定されず、他人から提供された乳歯歯髄由来(乳歯を抜去した歯の神経部分から採取)や臍帯由来(赤ちゃんのへその緒から採取)の幹細胞を用いることも可能です。
まさに細胞というナマモノを使うので料理に例えるとイメージがわきやすいかとおもうので、下の図を見ていただくとわかりやすかもしれません。

よくある質問(Q&A)
Q1. 幹細胞治療は何歳から受けるのが効果的ですか?
A. 明確な年齢制限はありませんが、40代以降で加齢変化を自覚し始めた頃から受けられる方が多いです。早めに取り入れることで予防的な効果も期待できます。
Q2. 副作用やダウンタイムはありますか?
A. 点滴療法の場合は大きなダウンタイムはなく、通常の生活にすぐ戻れます。ごくまれに点滴部位の赤みや腫れが出る場合がありますが、数日で改善します。
Q3. 一度の治療でどれくらい効果が持続しますか?
A. 個人差がありますが、数か月〜半年ほど実感される方が多いです。定期的な継続でより安定した効果を期待できます。
Q4. 幹細胞治療とサプリや点滴療法の違いは何ですか?
A. サプリや点滴は不足している栄養素を補う「サポート」的な役割が中心です。一方、幹細胞治療は細胞そのものの機能を回復させる「根本的なアプローチ」といえます。
Q5. 美容目的と病気予防目的では治療内容は変わりますか?
A. 使用する幹細胞の種類や投与のプランが異なる場合があります。美容中心なら肌や髪への効果を重視し、予防目的なら生活習慣病や体力低下を意識した内容になります。
Q6. どのくらいの通院ペースが一般的ですか?
A. 初回治療後は効果の持続を見ながら、1~3月に1回のペースで受けられる方が多いです。体調や目的に合わせて調整できます。
Q7. 幹細胞治療を受けられないケースはありますか?
A. 妊娠中・授乳中の方や、重度の感染症をお持ちの方などは原則として受けられません。詳しくは事前の問診・検査で確認します。
Q8. 費用はどのように決まりますか?保険は使えますか?
A. 幹細胞の種類や投与方法、回数によって費用が変わります。自由診療のため健康保険は使えませんが、事前に見積もりをお伝えします。
Q9. 他の美容医療や治療と併用できますか?
A. 併用は可能です。例えば美容点滴やレーザー治療と組み合わせることで、相乗効果が期待できる場合もあります。主治医と相談しながら安全に進めます。
Q10. 治療後に生活習慣で気をつけることはありますか?
A. 規則正しい睡眠、バランスの良い食事、適度な運動は効果を長持ちさせます。喫煙や過度な飲酒は細胞への負担が大きいため控えるのがおすすめです。
当院での安全管理体制
幹細胞治療は高度な専門性を必要とする医療です。そのため、当院では安全性を最優先に考え、以下の体制を整えています。
・法令遵守の徹底
「再生医療等安全性確保法」に基づき、厚生労働省への届け出や審査を通過した計画に基づいて治療を行っています。
・専門医による診療・管理
幹細胞治療に精通した医師が常勤し、全ての治療を監督。患者さまの状態に応じた適切なプランを立案します。
・クリーンな環境での細胞管理
提携する細胞加工施設(CPC)は厳格に管理され、無菌環境を保ったまま幹細胞を培養。品質保証書を発行し、透明性を確保しています。
・緊急時の対応体制
点滴中の体調変化にも迅速に対応できるよう、救急設備を整備しスタッフもトレーニングを受けています。
安心して治療を受けていただくために、当院は常に「安全・透明・誠実」を基本方針としています。
まとめ
アンチエイジングは、見た目を若く保つだけでなく、生活習慣病や認知症といった加齢関連疾患の予防につながる重要な取り組みです。その中でも幹細胞治療は、従来の美容医療とは異なり、細胞レベルで全身の機能回復を目指せる画期的な方法として注目を集めています。
当院では、自己脂肪由来幹細胞や幹細胞上清液療法など複数の方法を提供し、患者さま一人ひとりの体調や目的に合わせて最適な治療をご提案しています。
「もっと健康的に年齢を重ねたい」
「いつまでも若々しく過ごしたい」
「将来の病気リスクを少しでも減らしたい」
そんな思いを持つ方にこそ、幹細胞治療は新しい選択肢となり得ます。どうぞお気軽にご相談ください。