幹細胞治療が注目される理由
近年、再生医療の分野で大きな注目を集めているのが「幹細胞治療」です。
変形性膝関節症で長年痛みに悩まされている方、糖尿病で薬の副作用に苦しんでいる方、従来の治療法では十分な効果が得られなかった方……。そんな方々にとって、幹細胞治療は新たな希望となる可能性を秘めています。
幹細胞治療とは、患者さん自身の脂肪組織や骨髄から採取した幹細胞を培養し、損傷した組織や臓器の修復・再生を促す医療技術です。従来の対症療法とは異なり、体が本来持つ再生力を引き出すことで、根本的な改善を目指すアプローチとして期待されています。
しかし、「自分は幹細胞治療の対象になるのだろうか」「どんな症状に効果があるのか」「治療を受けるための条件は何か」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、アメリカ再生医療学会専門医として3000件以上の幹細胞治療に携わってきた経験をもとに、幹細胞治療が向いている人の特徴、対象となる症状、そして治療を受けるための適応条件について、わかりやすく解説します。

幹細胞治療の基本的な仕組み
幹細胞治療を理解するには、まず「幹細胞」とは何かを知る必要があります。
幹細胞は、自分と同じ細胞を生み出す「自己複製能」と、さまざまな細胞に変化できる「分化能」という2つの特別な能力を持った細胞です。私たちの体内には、失われた細胞を補充し、組織を修復するために、常に幹細胞が働いています。
再生医療で使用される幹細胞には、いくつかの種類があります。
成体幹細胞は、体内の特定の臓器や組織に存在し、その組織の修復に関与する幹細胞です。骨髄や脂肪組織などから採取され、患者さん自身の細胞を使用するため、拒絶反応のリスクが極めて低いという特徴があります。
間葉系幹細胞は、成体幹細胞の一種で、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞などに分化する能力を持っています。特に脂肪由来の間葉系幹細胞は、採取が容易で増殖能力が高く、炎症を抑える作用や血管を新生する作用に優れているため、多くの疾患への応用が期待されています。
幹細胞治療では、これらの幹細胞が持つ「パラクライン効果」が重要な役割を果たします。パラクライン効果とは、幹細胞が分泌する成長因子やサイトカインが、近隣の細胞に直接作用して組織の修復を促す働きのことです。
さらに、幹細胞には「ホーミング」と呼ばれる能力があります。これは、体内の損傷部位や病巣を探し当てて、自発的にその部位に集まる性質です。この能力により、幹細胞は効率的に損傷した組織を修復することができるのです。
幹細胞治療が効果を発揮しやすい症状
幹細胞治療は、従来の治療法では根本的な改善が難しかった疾患に対して、新たなアプローチを提供します。
変形性関節症と慢性疼痛
変形性膝関節症は、加齢や負担の蓄積によって膝の軟骨や半月板がすり減り、痛みやこわばりが生じる疾患です。階段の上り下りがつらい、朝起きた時の一歩目が痛い……。こうした症状に長年悩まされている方は少なくありません。
従来の治療では、ヒアルロン酸注射やPRP療法が行われてきましたが、効果が一時的であったり、進行した症例では十分な改善が得られないケースもありました。
幹細胞治療では、患者さん自身の脂肪から採取した幹細胞を膝関節に投与することで、損傷した軟骨や半月板の修復を促し、炎症を抑制します。

糖尿病と代謝性疾患
糖尿病は、膵臓のインスリン産生細胞(β細胞)が破壊・機能低下することで血糖値が高くなる疾患です。特に若年発症の糖尿病や、家族歴がある方では、生涯にわたる薬物治療が必要となることが多く、薬の副作用に悩まされるケースも少なくありません。
幹細胞治療では、幹細胞が分泌する成長因子が膵臓の血流を改善し、β細胞の再生を助けることが期待されています。また、免疫の異常反応を抑えることで、自己免疫によるβ細胞の破壊を防ぐ可能性も報告されています。
神経系疾患と脳機能障害
パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、多発性硬化症などの神経変性疾患は、従来の治療では進行を遅らせることが限界とされてきました。
幹細胞治療では、幹細胞が分泌する神経栄養因子(GDNFやBDNF)が、運動ニューロンを保護し、細胞死を遅らせる可能性が示されています。また、炎症を抑制することで神経周囲の環境を整え、病気の進行スピードを遅らせることが期待されています。
脳梗塞後の後遺症に対しても、幹細胞治療による神経再生や血管新生の促進が研究されており、運動機能や認知機能の改善が報告されています。
免疫系疾患と慢性炎症
関節リウマチやSLE(全身性エリテマトーデス)などの自己免疫疾患では、免疫システムが誤作動を起こし、自分自身の組織を攻撃してしまいます。
幹細胞治療では、幹細胞が分泌する免疫調整因子(サイトカイン)が免疫のバランスを整え、自己免疫反応そのものを抑制することが期待されています。また、幹細胞が炎症部位に集まり、損傷した組織を修復する働きもあるため、関節の腫れや痛みを軽減し、機能回復をサポートします。
従来の免疫抑制剤やステロイド薬では、一時的に症状を抑えることはできても、長期使用による副作用(感染症リスク、骨粗しょう症など)が問題となるケースもありました。幹細胞治療は、薬では抑えきれなかった慢性炎症に対して、新たなアプローチをもたらしています。
幹細胞治療に向いている人の特徴
幹細胞治療は、すべての患者さんに適応されるわけではありません。
治療効果を最大限に引き出すためには、患者さんの状態や症状が治療に適しているかを見極めることが重要です。
従来の治療で十分な効果が得られなかった方
薬物療法や理学療法、手術などの従来の治療を試したものの、期待した効果が得られなかった方は、幹細胞治療の良い適応となります。
例えば、変形性膝関節症でヒアルロン酸注射を何度も受けたが効果が一時的だった方、糖尿病で複数の薬を服用しても血糖コントロールが難しい方、慢性的な痛みに対して鎮痛薬を長期間服用しているが改善が見られない方などです。
幹細胞治療は、従来の治療とは異なるメカニズムで作用するため、これまでの治療で効果が不十分だった方にも新たな可能性を提供できます。
手術を避けたい、または手術ができない方
変形性関節症の進行した症例では、人工関節置換術が選択肢となることがありますが、手術には入院やリハビリ期間が必要であり、高齢の方や合併症のある方では手術リスクが高くなる場合もあります。
幹細胞治療は、外科的手術を伴わず、脂肪組織の採取と幹細胞の投与という比較的体への負担が少ない方法で行われます。局所麻酔下で脂肪を採取し、培養した幹細胞を点滴や局所注射で投与するため、高齢の方でもストレスなく治療を受けることができます。
「手術は怖い」「入院で家を空けられない」といった理由で治療をためらっていた方にとって、幹細胞治療は現実的な選択肢となります。
慢性疾患の進行を予防したい方
糖尿病、動脈硬化、認知症などの慢性疾患は、早期に介入することで進行を遅らせることができます。
特に、境界型糖尿病(糖尿病予備軍)の段階や、軽度の認知機能低下が見られる段階で幹細胞治療を行うことで、β細胞の消耗が進む前に再生を促したり、脳の血流を改善して神経細胞を保護したりすることが期待されます。
「将来の合併症を予防したい」「健康寿命を延ばしたい」という予防医療の観点からも、幹細胞治療は有効なアプローチとなります。
薬の副作用に悩んでいる方
長期間の薬物治療による副作用に悩まされている方も、幹細胞治療の良い適応となります。
糖尿病治療薬の副作用で倦怠感や疲労感が強い方、免疫抑制剤による感染症リスクに不安を感じている方、鎮痛薬の長期服用で胃腸障害が出ている方など、薬に頼らない根本的な治療を希望される方にとって、幹細胞治療は新たな選択肢となります。
自己由来の幹細胞を使用するため、拒絶反応のリスクがほぼなく、重篤な副作用の報告もほとんどありません。
幹細胞治療の適応条件と検査内容
幹細胞治療を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
全身状態が安定していること
幹細胞治療を安全に行うためには、患者さんの全身状態が安定していることが前提となります。
悪性腫瘍(がん)の既往がある場合は、再発リスクを考慮して慎重に適応を判断します。また、重篤な心疾患、肝疾患、腎疾患がある場合や、活動性の感染症がある場合は、治療が制限されることがあります。また、
高齢の方でも、心機能や腎機能が安定していれば治療を受けることは可能です。実際に、当院では70代、80代の患者さんも多く治療を受けられています。
治療前の検査項目
幹細胞治療を受ける前には、以下のような検査が行われます。
血液検査では、感染症(HIV、B型肝炎、C型肝炎、梅毒など)の有無、腫瘍マーカー、肝機能、腎機能、血糖値などを確認します。これらの検査により、治療の安全性を確保し、幹細胞の培養に影響を与える要因がないかを評価します。
画像検査では、MRIやCTを用いて、損傷部位の詳細な状態を確認します。変形性関節症の場合は、軟骨の摩耗度や半月板の損傷程度を評価し、治療計画を立てます。
問診と診察では、現在の症状、既往歴、服用中の薬、アレルギーの有無などを詳しく確認します。患者さん一人ひとりの状態に合わせた最適な治療プランを提案するために、丁寧なカウンセリングを行います。
妊娠中・授乳中の方への対応
妊娠中や授乳中の方に対しては、安全性に関する十分なデータが確立されていないため、現時点では治療の対象とはなっていません。
ただし、妊娠前の実施は可能であり、治療後の血糖改善は妊娠糖尿病のリスク低減につながる可能性があります。妊娠を希望されている方は、事前に医師にご相談ください。
未成年への対応
未成年の方に対しても、現時点では安全性と有効性に関するデータが不十分であるため、原則として治療の対象とはなっていません。
幹細胞治療の実際の流れ
幹細胞治療は、どのような手順で行われるのでしょうか。
初回診察とカウンセリング
まず、初回診察では、患者さんの健康状態や病歴を詳しく確認し、幹細胞治療の適応があるかを判断します。
治療の効果やリスク、費用について詳しく説明し、患者さんが納得された上で治療を進めます。疑問や不安な点があれば、どんなことでもお気軽にお尋ねください。
脂肪組織の採取
治療が決まったら、局所麻酔下で腹部からパチンコ玉1個程度の脂肪組織を採取します。
採取時間は約15分程度で、当日は日帰りで帰宅できます。採取後の制限もほとんどなく、通常の生活を送ることができます。
採取部位には軽度の内出血や疼痛が生じることがありますが、1〜2週間程度で自然に軽快します。

幹細胞の培養と増殖
採取した脂肪組織から幹細胞を分離し、厚生労働省認定のクリーンルームで約6〜7週間かけて培養・増殖します。
当院では、国内トップレベルの培養施設を厳選し、細胞の質や安全性に徹底的にこだわっています。培養過程では、細菌や真菌の混入がないか厳密に検査し、高品質な幹細胞のみを使用します。
培養中は、痛みを抑えるために幹細胞培養上清液(エクソソーム)を投与することも可能です。これにより、培養期間中も症状の緩和を図ることができます。
幹細胞の投与
培養が完了したら、幹細胞を患部に投与します。
投与方法は、症状や治療部位に応じて異なります。関節内への局所注入、静脈点滴による全身投与などがあり、患者さん一人ひとりに最適な方法を選択します。
投与時間は約60分程度で、投与後は定期的に診察を行い、幹細胞が損傷部位で機能しているかを確認します。
経過観察とフォローアップ
幹細胞投与後は、定期的な血液検査や画像検査で効果を評価します。
多くの患者さんでは、投与後2〜3ヶ月で症状の改善が見られ始めます。変形性膝関節症の場合、痛みスコアの改善や可動域の拡大、MRI画像での軟骨再生が確認されることがあります。
糖尿病の場合は、HbA1cの改善や血糖値の安定化が見られます。効果の持続期間には個人差がありますが、多くの方で1年以上効果が持続しています。必要に応じて追加投与も可能です。
幹細胞治療を受ける際の注意点
幹細胞治療を検討される際には、いくつかの重要なポイントを理解しておく必要があります。
効果には個人差があること
幹細胞治療は、患者さん自身の再生力や修復力を引き出す治療法ですが、その効果には個人差があります。
年齢、症状の進行度、全身状態、生活習慣などによって、治療効果は異なります。すべての患者さんにおいて期待どおりの結果が得られるとは限りません。
ただし、従来の治療では得られなかった「変化」を実感する方が増えていることは確かです。
自由診療であること
現在、幹細胞治療は保険適用外の自由診療となります。
治療費は、1回あたり約200万円〜400万円前後が一般的です。費用は、採取する細胞の種類、培養方法、投与回数、治療目的によって異なります。
当院では、最高品質の治療を適正価格で提供することを心がけており、治療前に必ず見積もりや費用の内訳を説明いたします。医療費控除の対象となる場合もありますので、詳しくはご相談ください。
認定施設で治療を受けること
幹細胞治療は、厚生労働省の「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、正式なプロセスを踏んだ医療施設でのみ提供されます。
当院は、厚生労働省に「第二種再生医療等提供計画」を提出し、計画番号を取得した正式な再生医療総合クリニックです。厚生労働省認定の特定認定再生医療等委員会による審査を経て、適合性が認められています。
治療を検討される際は、必ず認定施設であるか、培養施設の品質管理体制が整っているか、説明責任や治療後のフォロー体制が充実しているかを確認してください。
生活習慣の改善も重要
幹細胞治療は「土台づくり」であり、治療効果を最大限に引き出すためには、生活習慣の改善も重要です。
糖尿病の場合、不摂生が続けば血糖値が再上昇する可能性があります。適度な糖質管理とバランスの取れた食事、適度な運動を継続することで、治療効果を長期間維持することができます。
変形性関節症の場合も、体重管理や適切な運動療法を併用することで、関節への負担を減らし、再発を予防することができます。
よくあるご質問
Q1. 治療効果はどのくらい持続しますか?
個人差はありますが、多くの方で1年以上効果が持続しています。必要に応じて追加投与も可能です。一般的には6〜18ヶ月ごとに1回が目安となります。
Q2. 1型糖尿病にも効果はありますか?
1型糖尿病の方にも効果が期待できます。幹細胞が免疫の異常反応を抑え、β細胞の破壊を防ぐ可能性が報告されています。
Q3. 治療後も食事制限は必要ですか?
基本的な食事管理は推奨しますが、厳格な糖質制限は不要になるケースが多いです。適度な糖質管理とバランス食で十分コントロール可能になることがあります。
Q4. 高齢でも治療を受けられますか?
全身状態が安定していれば高齢者でも実施可能です。加齢で低下した再生力を補う目的で選択されることも増えています。心機能や腎機能、抗凝固療法中などは個別に評価します。
Q5. 運動が苦手でも治療効果は出ますか?
運動強度よりも、炎症改善やβ細胞保護による基礎代謝改善が軸となるため、運動が苦手でも効果は期待できます。
Q6. 妊娠を希望している場合、幹細胞治療は受けられますか?
妊娠前の実施は可能です。妊娠中・授乳中は投与を避けますが、治療後の血糖改善は妊娠糖尿病のリスク低減につながる可能性があります。
Q7. リバウンド(再上昇)することはありますか?
不摂生が続けば上昇する可能性があります。治療は「土台づくり」であり、生活管理の質で持続期間が変わります。
Q8. 薬物療法やリハビリと併用できますか?
可能です。幹細胞治療は「再生環境を整える」治療のため、鎮痛薬や代謝改善薬、理学療法、栄養最適化を組み合わせると相乗効果が期待できます。
まとめ ── あなたも幹細胞治療で新しい人生を
幹細胞治療は、従来の治療法では改善が難しかった疾患に対して、新たな希望をもたらす医療です。
変形性関節症、糖尿病、神経系疾患、免疫系疾患など、幅広い症状に対して、体が本来持つ再生力を引き出すことで、根本的な改善を目指します。
特に、従来の治療で十分な効果が得られなかった方、手術を避けたい方、薬の副作用に悩んでいる方、慢性疾患の進行を予防したい方にとって、幹細胞治療は現実的な選択肢となります。
ただし、治療効果には個人差があり、すべての患者さんに同じ結果が得られるわけではありません。また、自由診療であるため費用面での検討も必要です。
それでも、「もう手術しかない」とあきらめる前に、再生医療という新しい選択肢をぜひ知っていただければと思います。
大阪・心斎橋の再生医療クリニック「CELL GRAND CLINIC」は、再生医療等安全性確保法に基づき、厚生労働省へ第二種・三種の再生医療等提供計画を届出し、特定認定再生医療等委員会の審査を経たうえで治療を提供する医療機関です(計画番号:PB5240089ほか/PC5250007ほか)。
当院では幹細胞治療を中心に、PRP・エクソソーム(幹細胞培養上清液)・線維芽細胞・NK細胞治療など幅広い再生医療に対応し、症状・既往歴・生活背景をふまえた個別の治療プランをご提案します。幹細胞再生治療では、投与日に合わせた培養と品質管理(生存率・表面抗原の確認等)を重視し、細胞品質の「見える化」に取り組んでいます。
治療の適応、期待できる効果と限界、リスク、費用はカウンセリングで丁寧にご説明します。詳しくはCELL GRAND CLINIC公式サイトをご覧ください。
※本コラムは一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を代替するものではありません。治療の適応や内容は、診察・検査結果等を踏まえて医師が判断します。