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COLUMN
2025.12.22
コラム

再生医療で膝の痛みを治す方法〜手術せずに改善できる幹細胞治療とは

膝の痛みに悩む方へ──手術しない選択肢があります

階段の上り下りがつらい。

朝起きて最初の一歩が痛い。

そんな膝の痛みが長引くと、「変形性膝関節症かもしれない」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。年齢や負担の蓄積によって膝の軟骨や半月板がすり減ると、痛みやこわばり、腫れが起こり、進行すると日常生活にも支障が出てきます。

しかし、近年は手術に頼らずに膝の機能を取り戻す再生医療が注目されています。従来の治療法では「手術しかない」とされていた状態でも、患者さま自身の細胞を活用した幹細胞治療によって、痛みの軽減や機能改善が期待できるようになってきました。

今回は、再生医療による膝治療の仕組み、効果、そして実際の治療の流れについて、専門医の視点から詳しく解説します。

変形性膝関節症とは──放置すると進行する膝の病気

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨が徐々にすり減り、骨同士が直接こすれることで痛みや変形が生じる疾患です。日本国内の潜在的な患者数は約3,000万人と推定されており、特に女性に多く見られます。70歳代では約70%、80歳代では約80%の方が膝の痛みで悩んでいるとされています。

初期症状を見逃さないために

最初は運動後だけ痛む程度だったものが、徐々に階段の昇り降りが辛くなり、朝起きた時の一歩目に痛みを感じるようになります。この段階で適切な対処をしなければ、症状は進行していきます。

進行すると、ちょっとした動作や安静時でも膝の痛みが出るようになり、痛みをかばうことで関節の可動域が狭まり、筋力が衰えるために余計に痛みを感じやすくなるという悪循環に陥ります。

従来の治療法とその限界

これまでの治療法は、運動療法や薬物療法などの「保存療法」が中心でした。鎮痛薬の服用やヒアルロン酸注射、運動、サポーターの着用などが行われますが、保存療法を継続しても症状の改善が見られない場合や、膝関節の変形が進行して痛みに効かなくなってしまった場合には、手術療法が選択されてきました。

人工膝関節置換術は大きな手術のため、体に負担がかかり、入院やリハビリも必要になります。年齢的に手術が受けられない、手術を受けようか迷っているという方も少なくなく、このような方々に対しては、手術以外の有効な治療法がないという問題点がありました。

再生医療とは──失われた機能を取り戻す新しい医療

再生医療とは、厚生労働省では「病気やけがで機能不全になった組織、臓器を再生させる医療」と定義されています。細胞や人工的な材料を使って、傷んだ組織や臓器を修復・再生する医療のことで、これまで治療法のなかった病気やけがに対して、新しい医療として期待が高まっています。

膝関節に対する再生医療では、主に「幹細胞治療」を行います。「手術しかない」と言われていた変形性膝関節症に、手術しないで治すという新たな選択肢ができました。

幹細胞が持つ特別な力

幹細胞は、様々な細胞に変化する可能性を秘めた、言わば細胞の赤ちゃんのようなものです。幹細胞が豊富であるほど、組織の回復力は高いと考えられます。

とりわけ、本治療に用いる脂肪由来の幹細胞には、脂肪だけでなく、骨や軟骨、血液、神経などの細胞に変化する能力が備わっていて、再生医療への実用化が進みつつあります。

幹細胞が膝の痛みに効く仕組み

幹細胞が治療に使われるのは、単に「細胞を補う」ためではありません。幹細胞が体内で分泌する成長因子やサイトカインが、損傷部位に”修復のスイッチ”を入れるためです。

主な修復プロセスは次の通りです。

  • 損傷部位への移動──幹細胞は体内で炎症や損傷が起きている場所を感知し、その部分へ集まる性質を持っています。
  • 炎症の抑制と環境改善──幹細胞が分泌する抗炎症性サイトカインが炎症を鎮め、再生が進みやすい環境を整えます。
  • 組織の修復・再生促進──成長因子が細胞の再生を促し、血管や神経、筋肉などの修復を助けます。

このプロセスは「パラクリン効果」と呼ばれ、幹細胞が”修復の指揮者”として働く仕組みです。つまり、幹細胞が直接臓器になるわけではなく、「臓器を再生するよう体に命令を出す役割」を果たしているのです。

自己脂肪由来幹細胞治療──当院が提供する最先端の膝治療

当院では、患者さまご自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養・増殖させ、膝関節に投与する「自己脂肪由来幹細胞治療」を提供しています。この治療法は、厚生労働省から「第二種再生医療等提供計画」を取得した正式な再生医療です。

培養幹細胞治療の特徴

脂肪由来幹細胞を体外で増やしてから膝に注射して、痛みや関節内の状態改善を図るというのがこの治療です。膝関節の痛みの改善や軟骨破壊の抑制が期待できるため、手術ができなかったり、したくないという方の選択肢として、近年注目が高まっている治療法のひとつです。

少量の脂肪採取で、より多くの幹細胞注入を可能にしたのが、培養幹細胞治療です。脂肪から幹細胞を取り出すところまでは通常の幹細胞治療と同様ですが、その後に幹細胞を培養することで、同じ脂肪量でもより多くの幹細胞注入をすることが可能となりました。

当院独自の高度培養技術

当院では、パチンコ玉1個程度の脂肪組織から最大2億個の幹細胞を培養します。1回の脂肪採取で最大10回分保存可能です。

投与時生存率95%以上の「新鮮」で高い活動率を誇り、先端技術で「若い」幹細胞を培養します。作り置き冷凍はせず、治療の都度新鮮な活性の高い細胞を使用することで、より高い効果が期待できます。

また、厚生労働省認可の最先端の施設で安全な細胞培養を行っており、細胞加工技術者が培養し、安定した品質を確保しています。細胞はバーコード管理するなど、取り違え予防の対策も徹底されています。

培養幹細胞治療で期待できる効果

脂肪幹細胞には、炎症を抑える作用と、痛みを軽減させる成分を作る作用があるとされています。つまり、つらい痛みを生じさせる原因にダブルに働きかけることができ、膝の痛みの軽減が期待できるのです。

痛みと関節機能の長期的な改善

培養幹細胞治療では、抗炎症作用や疼痛抑制作用、関節機能の向上が報告されています。このことから、ヒアルロン酸注射が効かないまでに進行したケースでも、痛みの緩和や変形性膝関節症の進行抑制の効果が期待できます。

治療後1年にわたり、日常生活動作、痛み、生活の質、症状、運動機能の改善効果が維持されたという報告があります。このことから、本治療は長期間効果が持続すると考えられます。

出典: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24449146/

軟骨破壊の抑制・再生が期待できる

変形性膝関節症では軟骨が徐々にすり減り、ついには関節が変形してしまいます。その病態に対しては、これまで有効な治療法がありませんでした。しかし培養幹細胞治療は、軟骨の保護や状態の維持が期待できます。病気の進行スピードを遅らせる効果も望めるのです。

海外で行われた研究では、生理食塩水を注射した群では軟骨の欠損が悪化したのに対し、培養幹細胞を注射した群ではその悪化が認められませんでした。さらに、現時点では症例数が少なく明確な結論には至っていませんが、培養幹細胞の投与によって膝の軟骨が再生して厚くなったという事例も確認されています。

出典:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24449146/

ご自身の細胞なので副作用が少ない

当院の培養幹細胞治療は人工的に作った細胞ではなく、患者さまご自身の細胞を用いて行います。そのため、アレルギー反応や拒絶反応が起こる可能性がとても低い治療法と言えます。当クリニックの全症例を見ても、重篤な副作用が現れたケースは1件もありません。

治療の流れ──通院のみで受けられる低負担な治療

培養幹細胞治療は、注射で関節内に投与できます。幹細胞を抽出するための脂肪も、主に臍の側の近くから1cm程度の切開から脂肪をとってくるだけで採取可能です。膝にメスを入れたり、大きな出血を伴うようなことはありません。そのため入院の必要はなく、当院の患者さまも皆さま、ご自身で歩いてご帰宅されています。

STEP 1:初診・検査

血液検査、問診により現在の膝の状態を詳しく評価します。MRI検査により、軟骨の状態や半月板の損傷の有無を確認します。

STEP 2:脂肪採取

患者さまの皮下脂肪を採取します。採取する脂肪量は豆粒大です。下腹部の目立たない位置から採取するのでご安心ください。所要時間は20分程度で、局所麻酔下で行うため当日日帰りで制限なく帰宅できます。

STEP 3:幹細胞の分離と培養

採取した脂肪細胞から幹細胞を分離して取り出します。この作業は、国の認可を得た専門の細胞加工施設で行われます。同じく細胞加工施設にて、取り出した幹細胞を約6〜7週間かけて培養します。

STEP 4:投与

培養した幹細胞を、膝の患部に注入します。注入は、膝の一般的な注射治療と同じ方法で行います。所要時間は5分程度です。痛みがひどく点滴により幹細胞を体内に戻す方法もあります(約60分)。

STEP 5:経過観察

定期的な診察で膝の状態、痛みの改善を確認します。早い方で数週間から疼痛・しびれの軽減が始まり、多くは2〜3か月かけて感覚や機能の改善が緩やかに進みます。

このような方に特におすすめです

培養幹細胞治療は、変形性膝関節症の症状改善や進行を遅らせる治療法として注目されています。以下のような方には、ぜひ一度ご相談いただきたいと考えています。

  • 保存的な治療で十分な効果が得られない方
  • ヒアルロン酸注射などが効かなくなった方
  • 入院や手術を伴う治療は受けたくない方
  • 年齢的に手術が受けられない方
  • 自分の膝で過ごしたい方
  • 再生医療を試してみたい

痛み止めの薬やヒアルロン酸注射などは、長期間繰り返すことで効果が得られなくなることがあります。そうした治療を漫然と続けていたという方に奏功することがよく見られます。

関連コラム:【症例紹介】手術しない変形性膝関節症治療

 

安全性と治療後の注意点

治療に伴うリスクを減らし、効果を最大限に引き出すため、治療後には以下の点にご注意ください。

脂肪採取後の注意点

  • 脂肪採取部位のむくみを抑えるため、当日から翌日にかけては飲酒をお控えください。
  • 入浴は1週間お控えください(患部を濡らさない洗髪やシャワー浴は可能です。全身のシャワーも術後3日後以降可能です)。
  • 脂肪を採取した部位に内出血、むくみ、質感が硬くなるなどの症状が見られるようになりますが、通常は1か月ほどで治まります。

培養幹細胞注入後の注意点

  • 治療当日は飲酒、または湯船に浸かるといった行為はお控えください(シャワー浴は可能です)。
  • 術後2〜3日は、激しい運動、マッサージなどはお控えください(腫れがひどくなる可能性があります)。
  • 膝を曲げ伸ばしする運動などは積極的に行ってください(安静にし過ぎると関節が動きにくくなることがあります)。

知っておいていただきたいリスク

当院は安全面には十分配慮いたします。実際、当院では過去に重篤な副作用は確認されていません。また、患者さまご自身の細胞を用いる治療なので、拒絶反応などのリスクも少ないと考えられます。

主な副作用としては、投与後の軽い発熱、倦怠感、注入部位の痛みなどが挙げられますが、いずれも一時的で自然に改善することが多いです。ただし、医療行為である以上、リスクがゼロとは言い切れません。脂肪塞栓症や感染、神経や血管の損傷などのリスクについても、事前に十分ご説明いたします。

出典:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30604993/ 

よくある質問

Q1. 治療効果はどのくらい持続しますか?

個人差はありますが、多くの方で1年以上効果が持続しています。必要に応じて追加投与も可能です。治療後完全に症状が消失したケースも多くあります。

Q2. 変形性膝関節症の進行度によって効果は変わりますか?

変形性膝関節症の、初期よりも進行期、進行期よりも末期の方が、治療効果が出にくいことが分かってきました。早期に治療を開始することで、より高い効果が期待できます。

Q3. 高齢でも治療を受けられますか?

全身状態が安定していれば高齢者でも実施可能です。加齢で低下した再生力を補う目的で選択されることも増えています。ただし、癌の既往がある場合や抗凝固療法中などは個別評価が必要です。

Q4. 薬物療法やリハビリと併用できますか?

可能です。幹細胞治療は「再生環境を整える」治療のため、鎮痛薬や代謝改善薬、理学療法、栄養最適化を組み合わせると相乗効果が期待できます。

Q5. 回数の目安は?

基本は1回を提案することが多く、症状と反応性に応じて医師と最適プランを決めます。維持療法としてエクソソーム治療併用なども検討します。

まとめ──手術しない膝治療という新しい選択肢

変形性膝関節症は、加齢や負担の蓄積によって誰にでも起こりうる病気ですが、近年の再生医療の進歩によって「手術に頼らない治療」が現実のものとなっています。

自己脂肪由来幹細胞を用いた治療では、炎症の抑制と組織の修復を同時に行うことができ、日常生活を取り戻す方が増えています。当院では、患者さま一人ひとりの症状や生活背景に合わせた最適な再生医療をご提案し、膝の痛みを根本から改善することを目指しています。

「もう手術しかない」とあきらめる前に、再生医療という新しい選択肢をぜひ知っていただければと思います。

大阪・心斎橋の再生医療クリニック「CELL GRAND CLINIC」は、再生医療等安全性確保法に基づき、厚生労働省へ第二種・三種の再生医療等提供計画を届出し、特定認定再生医療等委員会の審査を経たうえで治療を提供する医療機関です(計画番号:PB5240089ほか/PC5250007ほか)。

当院では幹細胞治療を中心に、PRP・エクソソーム(幹細胞培養上清液)・線維芽細胞・NK細胞治療など幅広い再生医療に対応し、症状・既往歴・生活背景をふまえた個別の治療プランをご提案します。幹細胞再生治療では、投与日に合わせた培養と品質管理(生存率・表面抗原の確認等)を重視し、細胞品質の「見える化」に取り組んでいます。

治療の適応、期待できる効果と限界、リスク、費用はカウンセリングで丁寧にご説明します。詳しくはCELL GRAND CLINIC公式サイトをご覧ください。 

※本コラムは一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を代替するものではありません。治療の適応や内容は、診察・検査結果等を踏まえて医師が判断します。

                           

【著者情報】

若林雄一                                    

若林 雄一

                                   

セルグランクリニック 院長/医学博士

                                   

【専門分野】
再生医療 幹細胞治療 坑加齢医療 予防医療 美容エイジングケア

【所属学会・資格】
アメリカ再生医療学会専門医 日本坑加齢医学会専門医 放射線診断専門医  核医学専門医 日本再生医療学会員 日本認知症学会員 他                                        

【略歴】                                        
神戸大学医学部卒業、神戸大学大学院修了(医学博士)。近畿大学医学部での臨床・教育経験を経て、米国国立衛生研究所(NIH)にて研究に従事。 神経疾患領域の研究を背景に、再生医療・抗加齢医療・予防医療を専門とする。 Pfizer社との共同研究による「PDE4Bに特異的なPET薬剤の世界初のヒト使用(First-in-human)」を第一著者として報告するなど、国際誌に多数の業績を有する。 科学的根拠と安全性・品質管理を重視し、患者一人ひとりの「健康寿命」を延ばす医療を目指している。